Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー新世界篇誕生1

 ・・・ザクッ・・・ザクッ、

枯葉を踏む足音・・・、
空を見上げると、時折吹く強い風の音・・・
周りからは木々の揺れる音・・・。
たいまつで辺りを照らしても、これ以上は馬車で進むことも叶わない。
・・・それは道が暗いとか、荒れているためとかという物理的な問題だけではない。
馬たちが「明確に」、これ以上進むことを拒否しているのだ。
・・・間違いない。
「目的」の森はここから先にある・・・。
自分がこういう現象に出くわすのは初めてだが、
二度ほど・・・同じような土地に出くわした者の話を聞いたことがある。
それは、私の夫である・・・いえ、夫だった者の口からだ。
もう彼は死んでいる・・・。
彼は恐らく自殺した。
数十人の子供達のカラダを切り刻んで、
怪しげな交霊術や「魔物」を召還するという妄想に取り付かれていた・・・。
そしてその結果、自分で自分の居城に火をつけまくり、
その業火の中で己の人生を閉じた・・・。
「恐らく」と言ったのは、勿論私自身含め、誰も彼の死の瞬間を目撃したわけではないからだ。
だが、私が最後に彼に会った時、「別離」の申し出を告げられたとき、
彼の目の中に一つの決意というか、何か重い物から解放されたような、
・・・変な言い回しかもしれないが、清清しい「何か」を感じたのだ・・・。
私にはその時、彼の申し出を拒絶する事はできなかった。
こうなることが・・・一番最良の結果である事を感じていたからだ・・・。
祖国を救った英雄・・・そして近隣の子供達を誘拐して惨殺した殺人鬼・・・。
それが同一人物であるなど、誰が考えよう?
もう、証拠も何も残っていない。
全てを知るのは・・・、
いや、少なくともその件について知りうるのは、
私と・・・先日まで私の身の周りを世話してくれた下男と、
先ごろ、旅先で何者かに殺されたというエセ学者ブルリンチしかいない。
・・・あいつについては、
然るべき報いというところか、生前の行いを考えれば相応しい死に方だろう。