Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

生い立ち

 
  2.

 何から話せばいいだろう?
私は、この九鬼帝国の帝都の宮城(きゅうじょう)で生まれ育った。
父は帝王九鬼実彦の弟・・・、
だが、私は父と親子らしい会話をした記憶がない。
父は私を見るとき、時には怯え、怖れ、崇め、私をまるで違う生き物のように接していた。
私のもう一つの記憶が、さんざん経験してきた視線だ。
家族としては、もう一人、兄がいるが、
ある意味、兄は私の理解者だったかもしれない。
私の「過去」を知っている・・・。
だが、私は兄を信用しない。
何故なら、・・・その兄こそ、私の戦うべき敵の一人なのだから・・・。
決して政の表に出てこないが、九鬼帝国を陰で動かす祭司・法術士ダイモン・・・。
それが兄の正体だ。

母は・・・弟が生まれるときに死んでしまった・・・。
可哀想なお母さん・・・。
母が死んだ時の私には、
・・・もう一つの過去の人生の記憶は、いまだ私の中に現われてはいなかったけれど、
母親のぬくもりを・・・母親とはいかにあるべきなのか・・・、
幼い私に教えてくれた。
遠いウィグル王家の長女として生まれたのに、
九鬼帝国に攫われて無理やり子供を生ませられた。
この事は、国民にもウィグル王国にも知られていない。
お母さんは、誰も信じられる人がいないこの国で、3人の子供を生んで亡くなった。

そして、その命を賭して産まれた弟は・・・先天的奇形児・・・
いや、あれはかつての世界の言葉で言うミュータント・・・。
知性も発達せず、ただ凶暴な性質を持って、
ただ憎悪を撒き散らすためだけを存在理由にした・・・まるで昔の私・・・。
私にだけは心を開いてくれてたけど、
弟は大陸戦争に徴収され、道具のように捨てられた・・・。
あの子も可哀想な犠牲者・・・。

そして、今、まさにあの邪悪なる9人が集まろうとしている・・・。
大陸戦争で国力を使い果たし、お飾りの帝王九鬼実彦も戦死した。
いよいよその隠れ蓑から「彼ら」は出ようとしている。
9人の呪われた魔人・・・400年前の亡霊共・・・、
「デミゴッド」の首領たち・・・。