Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

・第三章 九鬼帝国から来た女

光から来た者

16. 部屋のドアがノックされた。 「誰!?」 フラアが強い調子で尋ねる。 ・・・だが返ってくる言葉はない・・・。 私はすぐにでも衛兵を呼び戻すべきだと考えていた。 戦闘になったら私は役に立たない。 ただの殺し屋風情なら、 その人間の強い殺意を読…

近づく足音

15. 私の悲鳴を聞いて、すぐに隣の部屋のフラアが部屋をノックした。 私はフラアの寝室の隣に住まわせてもらっていた。 私は一瞬、パニックを起こし大声で叫んだ、 不審者が窓の外にいる・・・衛兵を呼んでと・・・。 すぐに二人の衛兵とフラアが入ってき…

真夜中の訪問者

14. ・・・とは言ってみたものの、今の私は誰かに物を頼める立場ではない。 しかも、どうやって依頼の口実を作ろうか? 私は自分の幽体を、カラダに戻していた。 あまり長時間は使えない、 何よりも、魂を空けている状態でカラダにショックでも与えられた…

謎の人物

13. 私は、正式にフラアの側に置いてもらえる事になった。 もう、体力は完全に回復している。 眠りに着く前には、自分の幽体を飛ばして、辺りを散策する事もできるようになった。 もちろん、それは夜だけのことだし(その気になれば昼間でも出来る)、 幽…

失われた過去の記憶と記録

12. フラアは活発なだけではなく、聡明な女性だった。 飛びぬけて頭脳が優れているとか、何らかの能力に秀でているというわけではないようだが、 周りの人たちの態度を見ても分る・・・。 フラアがいると、その場の空気全体が華やぐ。 ・・・確かに言動は…

二度と会えない娘よ

11. かつてディジタリアス殿下が、フラアの出生の秘密に気づいたのも、 彼女が魔女の嫌疑をかけられて、審問所に引き立てられるときに、 偶然、彼女の髪飾りを目撃した事が発端であった。 フラアの命を救ったのは、ディジタリアス殿下だが、 母の形見のル…

ウィグル王家の証

10. 宝石そのものは大して重要ではなかった。 肝心なのはその台座だ。 ウィグル王国の先々代の王は、自分の3人の子供達にそれぞれ宝石を贈ったという・・・。 長男にはダイヤの指輪を・・・、 長女にはサファイアの首飾りを・・・、 末の娘にはルビーが施…

形見の宝石

9. 冗談ではない! では、私はここに誘導されてきたのか!? 何のために!? 私がフラアに近づいて、「彼ら」の誰が得をするのだ? 私が持っている「彼ら」の情報は、大した物ではないが、 フラアを警戒させるには十分だ。 自分たちに不利になる情報を、わ…

皇女との邂逅

8. 「だんだん、顔色も良くなってきたわね? もう外を歩いてもいいんじゃない・・・?」 自分でも体調が回復してきたのは分る・・・、 だが・・・顔色・・・? そうだ! ・・・自分の顔は硫酸で焼け爛れているのではないのか・・・!? その気になれば、幽…

故ディジタリアスの居城

7. 私が目覚めた時、私は病院の一室にいた。 後でわかったが、2~3日、意識を失ってたらしい。 私を運んでくれた馬は、この町の城門をくぐった所で、力尽き衰弱死していたそうだ、 ・・・ごめんなさい・・・。 私を診てくれたのは、まだ年若い女性の医師…

たった一人の殺戮者

6. 馬は川の音が聞こえるところで、時々身を休める・・・。 私も馬から降りて、水を飲む事が出来る。 だが、馬はまるで自分が意志を持っているかのように私をけしかけ、 上に乗れと、私に軽く噛み付いて促す。 ・・・いつの間にか、私は馬上で半ば意識を失…

盲目での逃走劇

5. だが、先手を打ったのは彼らだった。 私が彼らの目的を知ろうとする前に、彼らは私の心を試そうとした。 何の罪もない町の子供を殺してみろだと!? ふざけるな! 私はあからさまに拒絶した。 当たり前だ、 ・・・子供を産んだ身で、そんなマネができる…

400年前の亡霊たち

4. 生物学・遺伝子学、どちらでもこんなことは考えられない。 だが、事実である。 兄・ダイモンも私も、400年前の世界から再びこの世に甦った! 自分達の子孫に転生しうるとは、遺伝子が400年の時を経て再現されたか、 その影響があったとでも言うのだろう…

秘められた過去

3. 「デミゴッド」・・・そんな組織名は覚えてもらわなくてもいい・・・。 所詮、大昔に消滅した名前だ。 肝心なのは、その組織の頭目達・・・、 あのおぞましき化け物どもが、この時代の人間の姿を借りて、 再びこの世に召還されたという事実だけだ。 い…

生い立ち

2. 何から話せばいいだろう? 私は、この九鬼帝国の帝都の宮城(きゅうじょう)で生まれ育った。 父は帝王九鬼実彦の弟・・・、 だが、私は父と親子らしい会話をした記憶がない。 父は私を見るとき、時には怯え、怖れ、崇め、私をまるで違う生き物のように…

ある女性の苦悩

1. ・・・私は何者なんだろう・・・。 いや、どう言ったらいいのか、 ・・・私には名前が二つある。 私の記憶も二つある。 あの忌まわしい・・・地獄のような生活、ほんの少しの権力とささくれ立った心・・・。 もう一つは今の・・・、 美味しいものは食べ…

フラア第三章設定資料

第三章「九鬼帝国から来た女」 この章は前章より一~ニ年ほど遡るお話。 舞台 神聖ウィグル王国 大陸の中央に位置する都市国家 国教はヤズス会マグナルナ派 大陸戦争勃発時は九鬼帝国と軍事同盟を組んだが、後にそれを破棄し アルヒズリとイズヌに軍事同盟を…