母親
そこでディジタリアスは質問をした。
「その女性はアスタナシア様であったのか・・・?」
「は、・・・はい、いえ、・・・高貴な身分の方かもとは思いましたが、
まさか王族の方までとは考えもしませんでした・・・。
お洋服もボロボロになっていましたし・・・。
ただ、いろいろな装身具をお持ちでしたので、
お金持ちの方なのだろうとしか・・・。」
「父親の筈の親衛隊長はいなかったのか?」
「後にも先にもそれらしき姿の方はおりませんでした・・・。」
ディジタリアスは一度、表情が固まったままのフラアを見上げる。
「それで・・・この娘は・・・。」
「は・・・い、
亡くなった女性はその胸に、
一人の赤ん坊を包み込むような形で事切れておりました・・・。
夫がその方を雪の中から引っ張り出すと、
何と赤ん坊が泣き声をあげて・・・うう、う・・・。」
泣いているのだろうか・・・。
もう母親の目から、こぼれ落ちるような水分はカラダに残っていない。
ただ嗚咽のみが漏れてくる。
恐らくフラアにその事実を伝えるつもりは全くなかったのだろう、
無理ないことなのだろうが・・・。
「その赤ん坊が・・・?」
「は・・・い、ここにいるフラアです・・・。
名前は、すでにそのご婦人がつけていたようです。
懐に、震える字で書き置きがありました・・・。
『窓から幸せそうなご家庭が見えました。
万一、私がここで命の火が尽きてしまうようなら・・・
大変勝手ではありますが、この赤ちゃんをその温かい家の中に入れていただけないでしょうか、
私の持っている宝石などは、全てご自由にしていただいて構いません。
ただ、できますならば私の髪にあるルビーだけは、
この子、フラアが大きくなった時に渡してやってください・・・』
それで・・・私たちはその遺言通りに・・・。」
もう母親の目から、こぼれ落ちるような水分はカラダに残っていない。
ただ嗚咽のみが漏れてくる。
恐らくフラアにその事実を伝えるつもりは全くなかったのだろう、
無理ないことなのだろうが・・・。
「その赤ん坊が・・・?」
「は・・・い、ここにいるフラアです・・・。
名前は、すでにそのご婦人がつけていたようです。
懐に、震える字で書き置きがありました・・・。
『窓から幸せそうなご家庭が見えました。
万一、私がここで命の火が尽きてしまうようなら・・・
大変勝手ではありますが、この赤ちゃんをその温かい家の中に入れていただけないでしょうか、
私の持っている宝石などは、全てご自由にしていただいて構いません。
ただ、できますならば私の髪にあるルビーだけは、
この子、フラアが大きくなった時に渡してやってください・・・』
それで・・・私たちはその遺言通りに・・・。」