オリオン神群~トモロス
・・・なお、後日、タケルがこのことで泣き言を吐いたら、 マリアさんは凄く納得のいく説明をしてくれた。 「だってタケルさん、あなたの体格じゃ、普通の気の弱い女性は近寄ってこれないわ、 あなたに近づく勇気のある女の子は・・・ね?」 じゃあ、するっ…
少女はタケルの反論など意にも留めない。 「あー? だからさ、・・・アタシがパパやママの仇を取りに行って何の問題があるんだい!? これでも、村で屈指の鞭使いと言われたアタシの腕は役に立つと思うよぉ!」 「鞭使い!? お前、何もんだよ!?」 「あた…
正確には「手伝う」というより、全部タケル達がやった言うべきなのだろうが、 ここはそういう突っ込みを入れる場でもない。 「ぜんぜん・・・それより、 気の毒だったな・・・、 もう、家族はいないのか・・・?」 「ん、・・・たった一人になっちゃった・・…
タケルやサルペドンは、 これまでの経緯をひとしきり話し、 騎士団との戦い・・・ダイアナの死・・・そして、 西にある地底へと続く洞窟のことまでも説明を終えた。 すでに時刻は夜を迎えている。 今後、具体的にどうするかはさらに熟考を要するので、 一同…
そうなのだ、 ウィグルの村人の銃や武器は全く役に立っていない。 武器性能の問題ではないのだ。 攻撃そのものが封じられているようなのだ。 その精神までも・・・。 下手をすると天叢雲剣だって・・・。 それを考えると、まっとうな戦いになるとはどうして…
だが・・・、 思わず、タケルはこの村の生き残りである少女の顔を視界に入れてしまった・・・。 今後・・・同じような目に遭う人たちがこれからも増えるであろう。 世界に再び笑顔が戻る日は一体いつ・・・。 「おい・・・ サルペドン!」 タケルは覚悟を決…
タケル一同息を飲む・・・。 そんな話を信じられるか、という拒否感もあるのだが、 確かに天叢雲剣で発現させる雷電とて、他人から見れば考えられもしない超能力・・・。 だが、逆に、もしそれらの能力が真実だとすれば・・・、 タケルのように器物や媒介に…
えっ!? たったこれだけで!? 「そうだ・・・、それが彼らの能力なのだ・・・、 何故なら、彼らは曲がりなりにも神を名乗っている・・・。 そしてそれらは・・・その神の名にちなんだ超常現象を操る力なのだ・・・。 動物が襲いかかってきたってことは・・…
いきなり話を振られた少女は、とまどいながら・・・いや、視線をあげることもできずに、 この一両日中に起きた惨劇を思い出そうとしていた・・・。 その心の中では、思い出さねばならないという義務感と、 それを頑なに拒否する心の弱い部分とでせめぎ合って…
「しかし、サルペドン様、 こいつらの装備を見てください! まさしく時代錯誤と言えるような、低い文明レベルではありませんか? ウィグルはもちろん軍事化された村ではありませんが、 ここまで蹂躙されるなど考えづらいのでは!?」 「その質問は当然だな、…
「何のために!? 第一自分たちだって人間だろ!?」 「・・・神々の立場に立てば、 人間は堕落した愚かな生き物なのだという認識なのだろう、 そして忌々しきは、 こいつらオリオンは自分たちを、その神々の正統な後継者と自認していることだ。 その発想は…
サルペドンの壮大な話はさらに続く。 「さて、では何が我々と対立するかと言えば・・・ ふぅー・・・、 どこまで信用できるかな・・・? タケル・・・みんな、 我らスサが神々の怒りにあい、逃げ延びた者たちの末裔である事は、 もう、説明の必要はないな? …
「それは!?」 「今から4000年前・・・地中海で発達した文化と繁栄を誇っていた者たち・・・、 ミケーネ文明の末裔たちだ。」 「ミケーネ文明? 世界史で習った気がするぞ?」 「そうだ、その存在自体は間違いなく実在したものだし、 そこに疑問をはさ…
全員が全員、サルペドンの奇妙な表現に、しばらく言葉が出ない。 マリアが、静かに家の照明をつけ始めた後、 タケルがようやく、当然感じた違和感ある表現に噛みついた。 「・・・世界・・・て? なんだ、そりゃ・・・異次元空間でも広がってるってのか?」 …
12ヶ所!? じゃあ、ここがその内の!? 「そして、じゃあ磁場が狂ってるからどうなんだ? という疑問もわくだろう。 まずは今言ったように、電子機器への異常などもあるが、 人体への影響もないとは言えない。 方向感覚を狂わしたり、 身心衰弱の人間に良…
元々タケルは、スサの創立過程の話など、 疑う時間すら与えられずにその総代の地位についた。 今さら、サルペドンの口からそんな事言われても・・・。 「えっ、あ・・・だけど・・・オレ達は・・・。」 「まぁ、話を聞け。 実際、あの海域で事故や事件が多い…
「洞窟?」 タケルの問いに、横から少女が口をはさんだ。 「洞窟って・・・確かに村の西にあるけど・・・、 あそこは禁断の地とされていた・・・。 あそこに近づいて、行方が分からなくなった人たちが過去に大勢いるんだ・・・。 その洞窟の事かな・・・?」…
「おお、タケル、そっちは無事に済んだのか?」 既に夕日は沈みかけていた。 紅い西日が差し始めたその屋敷の中で、 サルペドンは既に尋問を終えていたようだ。 タケル達は遺体を全て処理し終えていたわけでもなかったが、 あらかた一段落させた上でここに戻…
もう、少女は涙すら見せず、かすかに頷くのみだった。 タケルは硬直していた夫婦のカラダを外してやり、 少女に持ってきてもらった薄いシーツで、二人のカラダを覆う。 家のハナレにはリヤカーのようなものがある。 少女曰く、北の方に少し行ったところに墓…
「なっ! ・・・オレはそんなつもりじゃ・・・!」 少女はまた無表情に戻ったが、その首の動きは無邪気な子供のようだ。 タケルの言い訳を理解しようとするそぶりも見せないが、 それでも最低限の礼儀くらいは取るつもりではあるらしい・・・。 「本当にゴメ…
タケルはここでまた少し、心を痛めた。 彼女の興味をひく話題を、と思ったのだが、 良く考えれば、この件だって辛い話だろう。 だが、もう途中でやめるわけにもいかないか・・・。 「オレ達はスサっていう。 大昔の古代王国の末裔なんだって。 世界中から同…
少女は・・・もう泣き顔は見せない。 タケルはゆっくり・・・彼女を刺激しないように努めながら、 これからの行動を提案してみた。 「え、と・・・まずは・・・君のお父さん・・・お母さんは・・・。」 少女は視線もあわさず・・・ いや、タケルに警戒してい…
ちなみにこのタケルの問いかけは英語である。 「・・・ん? 英語? 英語なら・・・少し分かる・・・。 日本語? おはよーござます、ありがっとござます・・・、ぶっ殺っす・・・とか?」 お? なんとかイケるか。 ・・・でも最後のは何だよ・・・。 タケル自…
迂闊に声もかけられない空気であるが、 ゆっくりできる状況ではない。 サルペドンはガルーダにいるデン・テスラに無線を入れ、 グログロンガ率いるマルト部隊を、逃げだした兵士の探索に向かわせる。 少女はマリアに任せ、 サルペドンは、捕まえた兵士から情…
「この子さっきの・・・!」 タケルは思わず声を上げていた。 一度、少女はタケルの声に反応したが、 そんなものはどうでもいいかのように、無視すると、 自らの鞭で捕まえた兵士に近寄り、 自らのナマ足の露出などお構いなしに、 怯えた兵士の顔や体にいき…
サルペドンにもわかってる。 タケルの反応も当然だし、 彼の行動の責任の一端にマリアが絡んでいるのも・・・。 最後にサルペドンは、抗議の意思を込めつつマリアに振り返る・・・。 (マ、マリア・・・おまえ・・・こうなることわかっててタケルに・・・) …
あたりは静寂に包まれた・・・。 ただその空間に、残されたのは・・・ トモロスの断末魔・・・。 「こ・・・こんなバカなぁ・・・私が、ち、地上の人間に・・・」 何かをしようとしていた・・・ 確かに何かを行おうとしていたのは間違いない・・・。 だが、…
そして本気でタケルが怒ったら、サルペドンだって止められやしない。 タケルはサルペドンの制止を振り切り、片腕が不自由なまま、 神剣・・・天叢雲剣を抜く!! その迫力に槍や剣を構えていた兵士たちが一斉に怯む。 しかしトモロスはあろうことか、恐れる…
さしものサルペドンも即答はためらわれた。 彼らに従うということは、 現状を判断するに、 罪のない民間人を虐殺していく事に協力することになるのは火を見るより明らかだからだ。 「そ・・・それは・・・、 あまりに突然な話です・・・、 長老たちにも話を…
さすがにサルペドンもこの質問にどう答えていいか、 対応を即断できないでいると、 さらに彼の計算違いなことに、今の会話をマリアがタケルに訳してしまっていた。 マリアは聞き取りだけはできたらしい・・・。 そこでタケルは大声をあげながらサルペドンよ…