Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

西方の蛮人アルベド

 
   13.

 「アルベドー! いるー!?」

ここはフラアの私邸、その隣の兵舎。
彼女専属の私兵や軍馬、貯蔵庫などがある。
隣の棟とはいえ、召使に連絡を取らせればいいのだが、
内容が内容なだけに、できれば信頼できる人間だけで用事を済ませたい。
・・・とは言っても、今、フラアに名前を呼ばれた男は、信頼できるのかどうかあんまり定かでない。
ウィグルの人間ではないのだ。
強いて彼を選んだ理由は、国外の人間のため、ウィグルの迷信に囚われない、
及び、気安く口をすべらす仲間が彼にはいない、という二つの理由からだ。
 「・・・なんすかー? お姫さまーぁ?」
頭をきれいに剃りあげた男は馬の世話をしていた。
仮にもお姫様に向かって取る態度ではない。
もっともフラアも気にしてないが・・・。

 「ちょっとお遣いに行ってほしいの? ジェバンス先生の自宅わかるでしょ?
 ひとっ走りよろしく!」
アルベドは不動のままフラアに不満ぽくグチを垂れる。
 「オレっすかぁ? そんなん召使にでもやらせりゃいーじゃねーすかー?」
 「文句言わない、居候のクセに! 働く働く!!」
ぶちぶち言いながら彼は仕度を始めた。
フラアから手紙を渡される。
 「それからね、この手紙はその場で読んでもらって、そのままあなたが持って返ってきて。」
アルベドはにやりと笑いながら、
 「へっ、悪巧みっすか? いいねぇ、そーいうの好きっすよぉ・・・。」と偉そうにほざく。
 「黙れ、こら。」
恐らく王統府の人間がこの場にいたら卒倒するだろう。
身分も礼儀もわきまえない会話がポンポン飛び出す。
一応、ここまで来たら、彼の出自の説明も必要だろう、
簡単に彼の紹介をする。