Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

預言者エア王

 
  5.
 
 常に温和な表情のエア王が、かつて無いほどの厳しい顔をしている。
ランディは何がなんだかわからない。
目の前の男は、宮廷内の閣僚でもなければ貴族でもない。
もちろん、王の親族にもこんな男はいないはずだ。
ランディがとまどっていると、金髪のその男は涼しく笑ってエア王に語りかけた。
 「・・・無理も無いでしょう、こんな時間にあなたの寝室に侵入している者など、
 警戒しないはずがありません。私のことは気にしないで結構ですよ?」

ところがランディは、さらに信じられないものを見た・・・。
エア王が、その男に向かって恭しく頭を下げたのである!
 バカな!!
 「へ、陛下!?」
 「・・・ランディ! そなたも頭を下げよ!
 このお方をどなただと思おておる!?」
そんなことを言われても、ランディにはこの状況が全く把握できない。
王が頭を下げる者などあっていい筈がない!
エアはゆっくりと頭を上げ、戸惑ったままのランディにゆっくりとつぶやいた・・・。
 「しかたないのう・・・、
 よいか、ランディ・・・。
 わしが何故『神に愛された王』と呼ばれるのじゃ?」
 「そ・・・それは陛下が、これまでに数々の預言を行い、
 このアルヒズリや世界を救ってこられたからでございます。」
これは事実である。
屈強なイル族の攻撃に、何度もアルヒズリが耐えていたのは、
その襲撃や戦闘において、
エア王の予知能力とも言えるような、予言を基にした作戦が功を奏してきたからである。
あの大陸戦争も、
東の大国を巻き込みながら、結果として、この地上の命、全てを救うことになった訳だが、
それは、このエア王の預言こそが、その発端の一つを為しているのでもある。

 「・・・では改めて問うぞ? ランディ、
 余はいかようにして、預言を得るのじゃ・・・?」
 「は、それは陛下が夢を見られてる間に、枕元に神の御使いが舞い降りるからと・・・。」

陛下は何を今更このようなことを?
アルヒズリの者ならこんな事は誰でも知っている!