Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

緒沢タケル第四章その37

 
 「いや、いい、どっちにしろ断片的にしか聞いてないのだろう?
 名前はどうでもいい。
 どうせ伝える民族によって、名前はバラバラだ、意味がない。
 ・・・古来、この地上には一人の神がいた・・・。
 人間たちは、誕生して間もないころだったが、
 まぁ・・・それなりにその神の元で繁栄していた・・・。
 それなりに、というのは、今の世も大差ないからだ・・・。
 貧しい地域もあれば、優雅な都市文明もあるからな。
 ・・・ところがある日、この地上で暮らす人間達を、この世から抹殺するという決定が、
 『天空の』神々の間で行われたのだ。」
確か・・・!
 「・・・アトランティスの沈没・・・。」
タケルが少し思い出したようだ・・・。
サルペドンはその反応に気を良くしたようだが、うなづいただけで、再び口を開いて話し続ける。
 「そうだな・・・では、タケル・・・
 こっちは知っているか・・・?」
 「・・・?」
 「大洪水・・・『ノアの洪水』の伝承は・・・?」
え・・・ノアの洪水・・・!?
タケルの記憶に間違いなければそれは・・・、
旧約聖書の・・・。
 「き、聞いたことはあるけど・・・も。」
 「そう、聖書に記述される最も恐ろしい虐殺の記録さ・・・。
 一神教の世界では、人類の抹殺は神が一人で決め、
 敬虔なノアの家族だけを大いなる慈悲の心で助けたというが・・・、
 とんだ茶番だ・・・。
 多神教の神話では、
 あの事件は真っ二つに割れた神々の闘争の結果なのだよ・・・。
 一方の神々は、人類を邪悪な生命と決めつけ、絶滅の計画を立て、
 もう一方の神がそれを打ち破るべく、苦肉の策として、
 たった一つの家族に箱舟を作ることを教えたのだ・・・。」