・緒沢タケルと秘密結社スサ
そして、彼ら三人が次の場所へと歩き始めると、 マリアは少し、距離を置いて、彼らの後についていく。 ・・・距離を置いたのは、彼女が一人で考える事があったからだ。 努めて顔には出さないようにはしているが、 無意識にうつむき加減で歩行せざるを得ない…
サルペドンはタケルから兜を返された。 彼・・・サルペドンにも、 この兜の異様な波動はビンビン伝わる・・・。 持っているだけならなんてことはないが・・・もし、自分がかぶったら・・・。 再び兜が台座に安置されてから、サルペドンは振り向いてタケルに…
サルペドンは兜の部分を台座から外し、タケルに手渡す。 ・・・思ったほど重くはない。 しかし、見れば見るほど奇妙な造りだ・・・。 面の左右の部分には、それぞれ不気味な顔が彫られている・・・。 まるで阿修羅像だ・・・。 「ま、まさか、かぶれと・・・…
「・・・てことは、これも紋章か何かが必要なのかい?」 「いえ、その必要はありませんが・・・、 今までこれを纏えたのは、私の数世代前の先祖・・・一人か二人程度なのです。」 「? どういうこと?」 「説明するのは難しいのですが・・・迂闊にこの鎧を装…
そこには古い、様々な・・・タケルの目にもわかる、 これらは年代物の宝物殿だ・・・。 多くの美術品や絵画・・・彫刻・・・宝石がちりばめられた家具・・・。 「おおおお~、・・・すげぇ・・・。 そうか、スサは古来の氏族の直系の子孫達で構成されるから…
「私が答えましょう。」 と、言ったのはクリシュナだ。 「タケル殿、私の先祖は代々、戦士階級でしてね、 表向きはヴィシュヌ神を崇めている事になってたのですが、 一族の秘儀においては、破壊と豊穣の神、シヴァ神に帰依しておりました。 緒沢家に伝わる天…
この浅黒い肌の、クリシュナという男も無表情だが、その割にはやたらと饒舌だ。 彼なりにタケルを歓待しているのだろうか? 「それで、タケル殿。」 「あ、は、はい!」 「私の仕事もいろいろありますが、その内の一つに、各施設の管理や、 宝物の整理とかも…
白鳥が部屋を出た後、マリアが再びタケルを先導する。 「では、タケルさん、サルペドン、行きましょう? 施設内の設備と・・・主なスタッフの紹介と・・・、 それに、クリシュナに鍵を開けてもらいましょうか? 一応・・・あの宝物室へも・・・。」 珍しくサ…
サルペドンを先頭に、全員席を立つ。 それから彼は、振り返って白鳥に話しかけた。 「白鳥亮・・・、ここまでご苦労だった、 後は、我らスサでタケルのことは引き受けるが・・・。」 「あ、はい、ありがとうございます! で、では私はここで・・・。」 「あ…
その後のタケルは大人しかった・・・。 サルペドンに対する疑惑の解消、・・・謝罪・・・、 無論、そんな早く気持ちの切り替えもできるわけでもなく、 偉そうなサルペドンに対する、タケルの嫌悪感はそうそうぬぐえるものではなかったが、 当面は、真剣にサ…
しばらく会話に参加してなかった白鳥が、目を剥いた。 「えっ? 待ってくださいっ、 今までのケンカ越しのやりとりは全部、やらせ・・・?」 その一言に、一番驚いたのはタケルだ。 「ええっ!?」 マリアとサルペドンは・・・ サルペドンが笑うのは初めて見…
指導力がない? そんな風には見えねーぞ!? ・・・そこへマリアが再び話に加わった・・・。 「タケルさん、今のサルペドンの話が・・・、 彼が美香さんを襲う理由がないことの証になるのよ・・・。」 「な、なんでっ!?」 「自分自身に厳しい戒めを与えて…
サルペドンの主張は・・・タケルにも十分すぎるほど・・・ いや、誰の口から出ようとも関係ない。 すべきことは一つだけ・・・。 正直、タケルには古代の神の話など、どうでもいいのだが、 これまでの何人かから聞いた話を総合すれば、 スサの行動原理・・・…
「・・・!」 「言うまでもなく、・・・わかるな、タケル・・・。 地上の主・・・大地の王、スサが伝える神というのは、 その時、人間を救った神なのだ・・・。 私の生まれた場所でポセイドンと呼ばれた存在・・・、 日本で言うスサノヲ・・・インドではシヴ…
「いや、いい、どっちにしろ断片的にしか聞いてないのだろう? 名前はどうでもいい。 どうせ伝える民族によって、名前はバラバラだ、意味がない。 ・・・古来、この地上には一人の神がいた・・・。 人間たちは、誕生して間もないころだったが、 まぁ・・・そ…
「かつては、それが一つの大元の地域から派生したためだとか、 地域や文化の共通の特性に応じて、自然に似通ってしまうとか、 いろいろな研究があるのだが・・・、 こと、このスサに至っては、 人類共通の記憶と、伝承・・・それが元になって広まっていった…
タケルがその「間に」首をかしげていると、ようやく面倒くさそうにサルペドンが答えた。 「『ギリシア』じゃあない・・・、 ま、これも私の目の傷と同様、またの機会にしてくれ、 タケル、お前が今、知りたいこととは全く関係がない・・・。」 気になるなぁ…
「では・・・タケルさん、もう一度・・・、 あなたがここに来てから、様子が変だな・・・とは思っていたのですが、 ようやく理由がわかりました。 最初に『何も知らない』と仰ってたのも、こういう背景があったのですね・・・? まず、誤解を解きましょう・…
「タケル・・・! 違・・・」 白鳥が否定しかける寸前、サルペドンの太い声が響いた。 「もういい、白鳥! ・・・この坊主に用はない、・・・捨てて来い!!」 「てんめぇぇ・・・!」 タケルが再びサルペドンに殴りかかろうとしたとき、ついにマリアが激昂…
ドガァッッシャァァッ!! タケルが拳を振り上げて机を叩き壊した・・・! 見るも無残に机はぺしゃんこだ・・・、 木製とはいえ、足がボッキリと折れている・・・。 マリアも白鳥も、その衝撃に驚くばかりで次の行動に移れない・・・。 サルペドンは無言でタ…
できそこない、と思われていたタケル・・・ それはその通りだ・・・。 タケルも忘れてたわけではない。 しかし、だからといって、美香が死んだ直後にこんな態度をとられて・・・。 けれども、サルペドンの容赦のない言葉は続く・・・。 「挑発的な、か・・・…
最後のセリフでタケルは荒々しく席を立つ! 「戦争!? ・・・なら、その戦争するのに、ここじゃ上下関係もねぇってのか!? それとも何か!? 美香姉ぇの務めていたスサ総代の座は、今はアンタのものだとでも言うのかっ!?」 片や白鳥は、この二人の争いに…
サルペドンの冷静すぎる態度がタケルの神経を昂ぶらせる。 「・・・そんなことを聞いてんじゃないすよ・・・! 自分の姿を見せず、人の会話を盗み聞きするなんてどういう趣味をしてるんです!? ・・・それに今も・・・! 姉貴は礼儀にうるさかったはずだ! …
・・・いかつい彫りの深い顔立ち・・・、 身長も180は越えるだろう、 分厚い胸板・・・年も50は過ぎているようにも見える。 男は右手をゆっくりとタケルに差し出した・・・。 「ようこそ、タケル君、・・・私がスサ副司令官、カール・サルペドンだ・・…
「カール・・・サルペドン? 副司令官?」 ・・・タケルの顔に緊張が走る。 副司令官ってことは、美香姉ぇの補佐官・・・ってことか? いったい、どんなヤツなのか? 一度、タケルは後ろの白鳥を振り返ったが、 白鳥も、何か助言もできるわけでもなく、 意味…
マリアの身長は170以上はあろうか? ヒールも込みなので正確な身長はわからないが、 恐らく美香よりも上背があるようだ。 妖精のように華奢なスタイルのため、余計に背が高く見える。 物腰もおしとやかで、貴族出身だと言われても誰も疑わないだろう。 彼女…
「ありがとうございます、タケルさん、 ごめんなさいね? あなたを試すような事をして・・・。 でも、私が今、聞いたことへの回答には・・・、 こう言ってくれないと困る・・・というものではありません。 正解なんてないのです。 騎士団の暴挙にしても、 彼…
マリアは辛抱強く、タケルの言葉を待つ・・・。 彼女も、タケルに対して酷な質問を投げかけているという事は十分に自覚している。 だが、 彼女もまた、亡き美香の意志を継ごうと懸命な身なのだ、 ならば、自分の役割は、このタケルを・・・。 「マリアさん、…
タケルの結論を待たずに、マリアは言葉を続ける。 「・・・今、騎士団の各戦略部隊が世界各地を混乱に陥れています。 直接、彼らの銃弾や凶刃に倒れる人間は少ないかもしれません・・・。 ですが、その二次被害によって多くの・・・それこそ力のない者から命…
「いいえ、タケルさん、 貴方がスサのことを知らなくても・・・、 美香様は貴方がいたからこそ、スサの総代の地位を務められたのよ? 貴方の存在が、あの方の心の支えになっていたのだと思います。」 「だって、オレ、何もしてないのに・・・!?」 「家族っ…