緒沢タケル第四章その48
「・・・てことは、これも紋章か何かが必要なのかい?」
「いえ、その必要はありませんが・・・、
今までこれを纏えたのは、私の数世代前の先祖・・・一人か二人程度なのです。」
「? どういうこと?」
「説明するのは難しいのですが・・・迂闊にこの鎧を装備すると・・・、
精神に変調をきたすのです・・・。」
「はぁ!?」
「私の祖父も、かつて、インド独立戦争時にこの鎧を纏おうとして、
すぐに、嘔吐や錯乱状態になり・・・、
言い伝えで、それらの情報はあったので、周りの人間で急いで剥がしたので、
しばらくしたら回復したのですが・・・、
私は勿論、父も・・・それどころか、
緒沢家の皆様も・・・この鎧だけは身につけることはできないのです。」
「の・・・呪いの鎧?
じゃ、じゃあマリアさんが部屋に入らないのも・・・?」
ここはサルペドンのセリフだ。
「彼女は異様に感受性が鋭くてな・・・、
霊的なものの反応がやたらと激しいんだ・・・。
お前の姉の美香も、この鎧にだけは近寄らないようにしていた・・・。」
「な、なんでそんな物をオレに見せるんすか!?」
「一応、念のため、とマリアが言ったろう。
これは防具としては中々のもんなんだ、
実験したが、機関銃の連射でも傷がつかない。
戦場でこれほど頼りになるものはないぞ?」
「だからといって・・・。」
「パッと見、どうだ? 何か感じるか?」
「ええ~? ・・・いや、特には・・・でも気味悪いっすよ・・・。」
クリシュナが口を挟む。
「サルペドン様、先に言わない方が良かったんでは?」
ふざけんな!
「なに、コイツは鈍感そうだからな、緒沢家の血筋としては考えられんが、
こういう時には意外と都合がいいのかもしれん。」
いい加減殺してやろうか、こいつ・・・。