Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ46

 
これまで、アルヒズリに訪れる不幸を未然に防いできたエア王の預言・・・。
それは神出鬼没のイルの軍勢の接近を予知したり、
伝染病の蔓延を防いだり・・・。
もちろん、預言は不定期に訪れるので、
為政者側としては、知りたい情報全てを得られるわけでもない。
・・・だが、国の存続に関わる重要な事件については、
必ずと言って良いほど、これらの預言が事前に降り、寸でのところで大事に至らずに済んでいる。
・・・実際、エア王の預言がなければ、
とうの昔にアルヒズリは国家の体を崩されていたであろう。
エア王が「神に愛された王」と呼ばれる所以でもある。

さて、エア王は話を続けている・・・。
 「・・・間もなくイルの大軍が、東の都市テルアハを攻め込むだろう・・・。」
 「なんと!
 では直ちに周辺から部隊の応援を・・・!」
だが、エアはその正論であろう重臣の意見をやんわりと否定する。
 「いや、必要はない・・・。
 伝令だけでよい・・・。」
 「な・・・なんですと!?
 では・・・その伝令の内容は!?」
 「聞くがよい・・・、
 テルアハの東から一人の英雄が現われる・・・。」
 「おお、英雄・・・ですと!?」
 「さよう・・・、
 その男は黒雲と雷鳴を轟かせて、戦場を切り裂いてゆく・・・、
 戦況が完全に変わるその時を見極め、テルアハの兵たちは打って出るがよい・・・!
 それまで、じっと固く城壁を死守するのじゃ・・・!」
 「・・・畏まりました!
 では、直ちに早馬を飛ばします!!」

その命令が伝達されると、
宮廷内は歓喜と期待の声で沸き上がった・・・。
しばし、他の案件は話題から置き去りにされ、
今後のアルヒズリの未来に向けて話に花が咲いている・・・。
それらを見渡しながら、
国王エアは独り言のようにつぶやいた・・・。

 「・・・そして英雄の出現とともに、更なる争いが始まっていく・・・、
 この大陸全ての大地を血で濡らす惨劇が・・・。
 そして・・・その先には、
 人間という生物そのものの存続をかけた、恐ろしい災厄までも・・・。」