Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ47

 
 その騎馬は、この小さな街をゆっくりと闊歩していた・・・。
馬に乗った男は兜こそ外していたが、
この国では見られない奇妙な黒い鎧を纏っている。
背中には裾にフリンジのついた厚手のマント・・・
髪はオールバックにしつつ、長い襟足を結わえている・・・。
正規兵でないのは誰の目にも明らかだが、
その高貴な出で立ちは雑兵の者ではありえない。
街の人間も、彼の姿に畏敬の念を覚えつつも、
今はそれどころの状況ではない・・・、
自警団も、大人たちも慌てて作業中だ。
・・・そうなると、今度はその騎馬の男が街の様子に違和感を覚えた・・・。
彼は街の人間を呼び止める・・・。
 「・・・どうした?
 やけに慌ただしいな・・・?」
 「そ、それが西のテルアハにイルの大軍が現われたんだ!
 そうそう、あの城は破れないと思うが、
 奴らがいつ何時、こっちに進路を変えるか・・・!」

男は一瞬、目の色を変えたが、
ゆっくり上体を起こして西の方角を見据えた・・・。
逆に、
呼び止められていた男は、街の誰もが聞きたかったことをその騎士に尋ねる・・・。
 「あ・・・あんた、どっかの兵隊さんか?
 この街を守ってくれるのか!?」
だが、騎馬の男は冷たく言い放つのみだ・・・。
 「悪いが・・・この街を守ってやる事などできない・・・。
 オレは、ただ復讐しに行くだけだ・・・!」
そして男は・・・この街を通り過ぎ、
西のテルアハへと向かう・・・!