Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ61

 
 なんだって!?
ランディは一瞬、何のことか分らなかった。
斜視眼のせいか、はっきり王の視線の先はわからなかったが、
顔の向きは明らかに自分に向けられている。
キョロキョロ左右を見渡すと、重臣達も自分に驚愕の視線を向けている。
 い、いったい、これは!?
 「へ・・・陛下!?」
 「・・・スーサ滅びし後・・・
 しばしアスラは、周辺の街を浮浪者のように彷徨っていた・・・。
 それまで築き上げた全ての物を、月の天使シリスに粉々にされてしまったからな・・・。
 王国だけでなく・・・自ら血の涙を流しがら願った信念の結晶をも・・・。
 愛する者を捨てて、
 愛する者をその手にかけてまで、
 ただ、そこに住む人々が安らぎながら暮らせる国・・・
 アスラが人生の大半を賭けて創り上げたそれらを、
 それらを全てシリスは粉々に打ち砕いた・・・!
 だが・・・シリスはアスラの命だけは奪わなかった・・・。
 彼らが何を考えていたのか、それはわからん。
 ウィグル王列伝にも肝心な事は書かれてはおらん。
 
 じゃが、御使いは余に告げた・・・。
 そのアスラ王が放浪せし時に、
 彼は自らの孫にその血族の証明を与えたという・・・。
 その者も、志半ばに命を落としたが、
 彼もまた、そのタネをこの地に残した・・・。
 以来、その子孫はアスラ王の血と、遺物を保持しながら、
 このアルヒズリに生きておるのじゃ。
 ・・・そう、ランディよ!
 そなたの鎧の胸当てに装着されておる円形のメダル!
 それこそ、アスラ王が先祖代々伝えてきたという『紋章』じゃ!
 サラフェディーニ家こそ、
 400年前、この大陸を席巻した・・・偉大なるアスラ王の血を伝える唯一の家系なのじゃっ!!」