施設の男 5
「お、おぃい・・・?」
すると背中の男は不思議な事をツナヒロに指示をした。
「右手を上にあげろ・・・。」
「右手・・・ホラ?」
「よし・・・。」
男はツナヒロの二の腕に、そっと指を触れると・・・、
そのまま静かに彼の腕に沿って指をなで下ろした。
「???」
勿論、痛くもかゆくもない。
だが、次の瞬間、信じられない現象が起こる。
今、触られた腕の皮膚がざっくりと割れ、
そしてそこから大量の血液が吹き始めたのだ!
「うわあああああっ! な、なにをするぅ!!」
あり得ないほどの出血だ!
これでは痛くないとはいえ、失血死してしまうのでは・・・!?
「騒ぐな・・・。」
男はツナヒロの腕をガッチリつかむと、
もう一度、同じ個所に指をなぞらえた・・・。
「ばかやろう! こんなに血が出てるじゃねぇ・・・あれ?」
血が・・・
いや、たしかに血だらけだが、皮膚が裂けていない・・・。
傷があった痕跡すら見えない。
そ、そんな馬鹿な・・・!?
試しに左手の指で、傷があったはずの個所を引っ張ってみるが、
ヌルヌルしてるだけで、正常な皮膚だ。
「な・・・なんだ? お前・・・何したんだ?」
「今、お前が認識すべきことは・・・、
オレがもう一度、お前のカラダに触れたら・・・、
そこから大量に血液が流れ出すということだ・・・。」
背後の男は相変わらず、何の感情も見せずにゆっくりと話す。
そしてツナヒロは完全に恐怖にのまれ、
その男に逆らう気が失せて行った・・・。
背中の男はさらに言う・・・。