施設の男 7
「い、いや、ホントに何も見ていない!!
ただ、こ・・・声が・・・。」
「声?」
「だ・・・誰にも言ってないし・・・わ、忘れるよ!!
それに声っというか叫び声だけ・・・!」
男は腕を伸ばす。
「ホントにそれだけだってば!! やめてくれよ、もう、ほんとに!!」
ツナヒロは肩を掴まれた・・・!
もっとも服の上からだけだが、それだけでも恐ろしい。
また血が噴き出さないかビクビクしている。
「叫び声か・・・なるほど。
では何故そんな物が聞こえたと思う?」
「し、知るわけないだろう!
お・おれはあそこが誰か偉い人の管理してる施設だとしか聞いていないんだ!」
「・・・ほう、誰からそんな事を聞いた?」
えっ!? それを突っ込まれるのか・・・いや実は違うのか!?
「ええっ、そ、それは・・・」
「もう一度、聞く・・・誰からだ・・・?」
男の指はだんだんツナヒロの首の近くへ・・・。
「お・・・踊り子だよ!!」
指の動きは止まった。
だが、彼の冷たい眼の光は変わることがない。
「踊り子? なぜあんな屋敷の事を踊り子なんかに尋ねる・・・?
おまえ、まさか、夜を共にしている女がいるのか!?」
「あっ、え・・・彼女は何も関係ないだろう!
ちゃんと三条様や陛下に許可はいただいてる!!」
しばらく男はそのままだったが、やがてツナヒロの体から一度指を離すと質問を変えた。
「まぁいい。
・・・で、噂にはなってるが、お前が400年前からやってきたというのは真実か?」
「真実かって・・・オレだって信じたくねーよ、ここが400年後だなんて言われても!
だが、おれがいた時代は、
『ウィグル王列伝』に書かれていた、大破局以前の世界にそっくりだってことだよ!」