施設の男 6
「わかるな・・・。
例えば、おまえの咽喉なんかに私の指が触れたら・・・、
出血量はこんなもので済まない・・・。
それこそ、私が傷を治す間もなく、お前は死に至る・・・。」
「あ・・・あぁ・・・。」
ツナヒロは震え始めた・・・。
これまで気楽に過ごしていた反動か、
明確な死の恐怖に、カラダが自分の意志でコントロールできなくなってしまっている。
「理解できればそれでいい・・・後ろを振り返っていいぞ・・・。」
そんな事言われても・・・
ツナヒロはよろけながら・・・いや、後ずさりしながらようやく振り返ることができた・・・。
薄い月明かりに長い髪が映える・・・。
若い・・・まだ若い男だ・・・。
下手したら二十歳前後の男じゃないか?
男の風体は異様で、肩甲骨まで伸びる長い髪自体、この国で見たことないが、
服装も体にぴったりフィットしている初めて見る服だ・・・。
そして何よりもツナヒロを見下ろす氷のような目・・・。
「・・・怯えなくていい、・・・オレの言うことに正直に答えるのならば・・・な。」
「あ、ああ、わかった、正直に話す・・・。」
「良し・・・。
まず、お前の名だ・・・。正確にもう一度・・・。」
「ツ、・・・ツナヒロ・スーク・・・。この国じゃ名字が前に来るから、
それに合わせるなら、スーク・ツナヒロだ・・・。」
「スーツナヒロ? スークナヒロ?」
「い、いや、スーク・ツナヒロ・・・、別にツナヒロでもいいが・・・。」
「ああ、じゃあツナヒロと呼ばせてもらおう、
それで、先日、塀によじ登っていたな、
お前は興味があると、いきなり、他人の塀の中をのぞくのか?」
「あっ、そ・・・それは・・・。」
ど、どうしよう、悲鳴が聞こえたからなんて・・・。
だが、この髪の長い男はツナヒロの懸念を感じ取ったようだ。
「何を見た!?」