Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

施設の男 14

 
だがこれ以上、
誰が通りかかるかもわからない路地裏で、話を長引かせるわけにもいかない。
何をすべきかははっきりとしている。
しかし、これまでさんざん、九鬼の人間に世話になって、
いきなりここを逃げ去るわけにも・・・。
ツナヒロの心の中はその葛藤で揺れた・・・。
 ・・・そうだよ、
 いま、オレが見た惨劇は、この国の中枢と関係があると決まったわけじゃ・・・。
まるで、今見聞きした話も幻だとでも思いたがるまでに・・・。
そして、ツナヒロの迷いはそれだけではない。

 ・・・ユェリンを・・・。
ここから逃げ出すとして、彼女も連れていけるのだろうか・・・!?
もしできないなら・・・やはり、このまま・・・。

夢遊病者のようにフラフラ歩き始めたツナヒロに背後から、
長い髪の男は最後に声をかけた。
 「ああ、一つ言い忘れた。
 お前が囲っているという踊り子な、
 ・・・そいつも、この施設で性技をたっぷりと仕込まれた諜報員の一人だ。
 お前をコントロールする為に九鬼が送り込んだ監視員だよ・・・。」

ツナヒロの動きが完全に止まった・・・。
明るい所なら、その青ざめた顔色が完全にはっきりとわかるだろう。
彼はゆっくり・・・その言葉を受け入れる事を拒否するかのように、
ゆっくりと振り返った・・・。

 う そ だ ぁ !!