ユェリン 2-1
ツナヒロは自分の部屋に戻っている・・・。
「ツナヒロ様・・・っ!?」
ユェリンはツナヒロを迎えると、すぐさまいつものように抱きしめに行ったが、
自分と視線を微妙にずらせているツナヒロの表情に、
当然のように違和感を感じ取った。
「ツナヒロ様、・・・どうしたのですか!?
何か変です・・・!」
「あ・・・ああ、今日は悪酔いしちゃった・・・気分が悪くてな・・・。」
「まぁ! それではすぐに薬と水をお持ちします!!」
「あっ、水だけでいいよ・・・、
薬はいらない・・・。」
ツナヒロはそのまま持ってきてもらった水を一気にがぶ飲みする。
それで多少は落ちつけたとしても、
心の葛藤が消えるはずもない。
それに当然、その悩みをユェリンに打ち明ける事も・・・。
ツナヒロは何度かユェリンの正体を確かめようと、
その質問を喉元までは出かかるのだが、その口がついに開くことはなかった。
「ユェリン、・・・済まない、
今夜はもう眠りたいんだ・・・。」
「ツナヒロ様・・・畏まりました、
せめてお傍であなたの肌に寄り添っていますわ・・・。」
「・・・。」
ツナヒロはしばらく眠りにつけなかった・・・。
布団の中で・・・
ユェリンの体温を感じながら・・・
その寝息と心臓の鼓動を聞きながら考え続けていたのだ。
ほんとうに彼女は・・・。
ツナヒロは暗がりで彼女の体を確かめる・・・。
その存在を確かめるために・・・、
自分がもはや、彼女を手放すことなど考える事も出来なくなっていることを確かめるために・・・。
「 ツナヒロ様・・・?」