第十九話
エリナは元々社交的かつ快活な女性らしく、
加藤恵子達とすぐに打ち解けた。
外国人でありながら、これほどまでに日本語を操れるのだ。
誰だって、エリナと仲良くなりたがるだろう。
それに聞きだしたいことがたっぷりとあるのだ・・・。
帰り道途中、まずは山本依子のジャブだ!
「ね・・・、エリナちゃん、
先週、自転車に突っ込まれそうな子供を助けたでしょ?」
一瞬、エリナはきょとんとしたが、
すぐに大声をあげて仰天したようだ。
「あ~!! そういえば、皆さんあそこにいた・・・ぁ
ごっ、ごめんなさい、今まで気付かなくてっ!!」
「いーわよ、そんなことぉ、
誰だって外国にきて、その場だけで会った人のことなんか覚えてる余裕ないわよぉ。」
加藤恵子もそれに続く。
「そうだよねぇ? 考えてみたらあたし達、初対面じゃなかったじゃんねぇ?
でも凄い運動神経ね、エリナちゃん、なんかスポーツやってたの?」
「あ、あは、え、えーと、
そ、それは他の地域からも海外留学生候補はいっぱいいるので、
推薦で選ばれるために、彼らに負けないよう、いろいろ特訓しました・・・!」
多少、しどろもどろになるエリナ。
一般生徒に真実を教えることはできない。
この一週間、エリナと斐山優一との間で交わされた合意の中に、
優一の出生の秘密、及びエリナが日本に来た本当の目的を、
他人に明かさない、という条項がある。
結局、優一がウィグルに戻り、その地位を継承するかどうかは、
本人自身決めていないし、エリナも性急に事を運ばせることもないと考えていたので、
しばらくは普通に高校生活を送ることになっていた。
だが・・・、斐山優一もそれ以外の事に関しては、
エリナの口止めさせる事を徹底できなかった・・・。
「余計なことは言うなよ」とは言っておいたのだが、
エリナにとっての「余計なこと」というものは、優一と同じ概念ではないらしい・・・。
それが、先ほどの教室での問題発言であり、
そしてこの後も・・・。