Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

無能なる者たち

 
母親は、アイザスの言葉を聞くと、安心して再び視線をフラアに戻した。
 「さ、聞いたかい、フラア?
 ・・・お前はこれから、本来の自分に戻るだけなんだよ・・・?
 お前は・・・私たちには過ぎた娘だ・・・
 まるで本物の宝物のような子供だったよ・・・、
 お父さんも本気で、そう思っていた・・・。」
 「・・・おかぁさん、いやだよぅ!
 あたし、・・・あたし一人になるぅっ! お願いだから一人ぼっちにしないで!!
 何でそんな悲しいこと言うのよぉ!!」
 「大丈夫・・・後ろをご覧?
 優しい王様と・・・、
 正しいお心をお持ちのディジタリアス・・・様と、
 それに、こんなに頼りになるナイトがいるじゃあないの・・・。
 ・・・みなさん、・・・この子を・・・お願い・・・します、
 守ってやってください・・・。」

元から涙線の緩いツォンは泣き始めてるし、
国王アイザスすらも、その瞳から涙を落していた・・・。
幼いころに母親が病没し、昨年前国王・・・父親を亡くしている彼ら兄弟も、
肉親を失う悲しさは知っている。

・・・だが何と言っても、このフラアの家族の命を奪ったのは、直接は法王庁と言えども、
救い切る事が出来なかったアイザスやディジタリアスも、
後ろめたさからか、この悲しい母娘に積極的な言葉をかけてやることなどできはしなかったのである。
 「(ボソボソ)・・・ディジタリアス、この場はどうすれば良いのだ?
 余は彼女たちに何と言葉をかければいい?」
 「(ヒソヒソ)あ・・・兄上、その・・・それは私にも・・・、ん? ツォン殿はいかがですか?」
 「(コソコソ)えええっ、お、おいらにだってどうしたらいいか、わかんないよっ!」

この場にいる彼ら全員、人付き合いのうまい方ではない。
せめて誰か女性でもいれば話は違うのだが、
フラアの悲しい心を埋めてくれるもの・・・それもいない今、
彼女の孤独感を癒す事など誰にもできなかったのだ・・・。