Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

転嫁

 
フラアも、この静かな部屋で、後ろのディタリアスやツォンの会話が聞こえないわけでもない。
自分の行動を危惧してるんだな、という考えまでは容易に想像つく。
とはいえ、本当にそれ以上、何も考えられないのだ。
誰のせいでこうなったのか、
どうしたらこの現実を避けることができたのか、
自分が悪いのか、法王庁のせいなのか、
ディジタリアスを恨めばいいのか、ツォンを責めればいいのか、
全て、疑問を解消させることもなく、堂々めぐりの疑問が次々と頭に沸いては消えていく。

程なく用意された毛布や水差しをツォンが運んできても、
フラアは認識はするが反応できない。
ツォンも何か言わねばと思い、
彼女を慰めようと、あれやこれや言ったり、背中をさすってもフラアには邪魔なだけだ。

辛うじて、・・・フラアはツォンに答えを返す・・・。
 「ツォン君・・・大丈夫・・・
 毛布・・・使うわ・・・だから・・・一人にして・・・。」
別に「大丈夫」なんて言葉の上だけだ。
このツォンという人間にも、
ある意味、自分より不幸な生い立ちを持ってる事は、前日聞かされていたが、、
今、この時点では思い至る事などできやしないし、
そんなものを指摘されたところで「知ったことか」と答えるしかないだろう。

失った家族はもう帰ってこない、
あの幸せだった空間も時間も元には戻らない・・・。
だったら、全ての慰めは無意味なのだ・・・。
家族以外に信じられる人間もいない。
ツォンやディジタリアスが自分を救ってくれた事は確かだが、
ほとんど初対面の人間だ。
心を許せるはずもない。
背中を見せるフラアの無言の主張に、
ツォンは彼女から離れ、壁際で自分の毛布にくるまった。