Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

悪夢の終焉 6

 
 「・・・申し訳なく思う、フラア・・・。」
彼女はその敵意をたたえた視線をディジタリアスに向ける。
その代り、これ以上は口を開きはしない。
この後のディジタリアスの言葉を待ったのだ・・・。
 「・・・我々には力がないのだ・・・。」

はぁ !?
何を言ってるのっ?
ディジタリアスはともかくとしても、アイザス王はこの国で一番偉いはずではないのっ!?
彼女の疑念はそのまま表情に出ている。
更なる説明を要することは誰にでもわかる。
勿論、ディジタリアスはその先を言う。
 「政治的実権を与えられていない私は勿論だが・・・、
 兄上、アイザス王はそのように育てられたのだ・・・。
 良くも悪くも、この神聖ウィグル王国は、
 法王庁と議会が発達して、
 王の手を煩わせることなく、国が円滑にその政を行えるよう、成熟してる。
 ・・・それがいささか暴走しすぎているという危惧は、私も常々あったのだが、
 今に至るまで・・・私も勇気がなく・・・
 言いわけにもなるが、誰の味方もいない私ではどうすることもできなかった・・・。」
その言葉に驚いているのは、
どちらかというとアイザス王だ。
兄弟とはいえ、ディジタリアスも一国の王に遠慮して、
自らの本音をぶつけることもできなかったのだ。
 「ディジタリアス・・・そなた!?」
うなだれるディジタリアス・・・。
 「兄上・・・申し訳ありません・・・。」
人間的にはアイザスは良くできている方かもしれない。
それは兄としてもだ。
弟の諫言に、感情を荒げるタイプではない。
ただ・・・一国の王としては未熟なだけなのだ・・・。