Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

シルヴァヌスの森 34

 
既にシルヴァヌスは、先ほどの翠色の大蛇に侵入者を襲うよう、能力を使用していた・・・。
だが、その大蛇はタケルを襲うことはしない。
それだけではない。
この社の周りには肉食系の大型獣も配置している。
それらがタケルに襲いかかる事を拒否していたのだ。
それゆえ、タケルはこの社への接近が容易だったのだ。

勿論、タケルにはそんな情勢は一切分からない、
彼に自覚出来るのは、目の前に親玉がいること、
及び、植物のツタに行動が封じられている事、その二点だけである。
そして当然、両手を抑えられ、剣を腰に佩いたままの状態では天叢雲剣の能力は使えない。

シルヴァヌスはタケルを捉えた事に安心しつつも、今一度、動物たちにタケルを襲うよう指令する。
 「・・・おかしい、何故貴様らは私の言う事を聞けない・・・。
 嫌がっている・・・? 怯えているのか?
 この男に・・・。」
シルヴァヌスの能力は、生物たちの本能までも操る事は出来ない。
人間で言えば、催眠術や暗示をかけて、ある程度意のままに従わせるのに近似した能力なのだ。
しかし何故・・・。

その時、獣たちが他の侵入者に反応した!
タケルの部下二名がこの神殿に辿り着いたのだ!
だが、彼らはシルヴァヌスに攻撃をかける事も、タケルを救いだす事も叶わず、
猛獣たちに襲われる。
 「うっ!?うわあああっ!!」
 「あっ、おい!、てめぇら!」
彼らを助けに行けないのはタケルも同じだ。
一方、シルヴァヌスはここに来ても首を傾げるだけだ・・・。
 「おかしいな? ちゃんと獣どもは私の言う事を聞くのに・・・、
 何故貴様だけ襲わないのか・・・!?」
タケルには未だ、余裕があったのだが、
部下が襲われ出した事でそれもなくなった・・・。
まだ、こいつと話し合う余地があるかと思ったのだが・・・、
部下が今にも喰われそうなのに、
この他人事のように落ち着き払った態度に、再び怒りを増幅させてゆく・・・!