Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

シルヴァヌスの森 33

 
だが、不思議な事にタケルに危機意識は生まれていなかった。
その蛇の動きに、こちらに対する警戒行動が見えなかったからだ。
だが・・・!

 「うぉっ!?」
タケルの四肢が何かに絡め捕られた!
別の蛇が背後から!?
いや、違う! これは植物のツタだ!
ご丁寧に両手両足、綺麗に巻きついてやがる!
それぞれ最大10センチぐらいの太さを持つ、巨大かつ繊毛を有するみずみずしいツタだ。
これはそう簡単に抜け出す事など出来る筈もないか・・・?
タケルはあっという間に行動を封じられてしまったのだ!!
・・・ここを狙われたら・・・!

そして・・・この時初めてタケルの耳に、この社の主の声が聞こえてきた・・・。
 「・・・よくも好き勝手してくれたな・・・この汚らわしい侵入者め・・・!」
それは遥か上方だ。
その声は社の屋根の遥か先、
絡み合う木々が台座のような場所を創り出し、
まさしく鳥の巣でも構成されているかのような位置に「それ」はいた・・・!
この地底世界の森の神・・・シルヴァヌス・・・!
もつれる長い黒髪を垂らし、顔には既に皺が彫られ始めている・・・。
どちらかというと未開世界の酋長のような風貌だ。
もっとも、肌が白いので、また一風変わった印象も受ける。
タケルは言葉が分からないが、縛られたままシルヴァヌスを見上げる・・・。
 「てめぇがシルヴァヌスか!?」
その男は、タケルを侮蔑的な目で見下ろした。
 「・・・地上のウジ虫が・・・!
 この私に口を対等にきけると思うなよ・・・?
 もっとも・・・聞きたい事はある。
 何故、私の可愛い生き物たちがお前に襲いかからない? ・・・私の命令に背いて・・・。
 いや、貴様は私の言葉がわからないか・・・、
 野蛮人なら仕方ないな・・・。」