Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

バッカスの酒宴 12

 
たどたどしい発音には違いないようだが、
それは確かな言葉遣いである。
そして勿論、スサの人間たちが、地上からやってきている事も、理解はしているようだ。
では何故、同胞の争いを無視してここまで笑顔を見せるのだろう?
歓待を受けるには、まずそこを確かめてから、・・・だな。

サルペドンが礼儀正しく手を伸ばす。
 「・・・初めまして、
 突然の来訪にも関わらず、我らをお招きいただき感謝の言葉もありません、
 スサの副司令官カール・サルペドンと申します。
 ・・・こちらが我らの頭領、緒沢タケルです・・・。
 会話は私を通していただければ、ここの言葉でも対応できますが、一体どこで地上の言葉を?」
ディオニュソスは「ハハハ!」と笑いだす。
 「酒のためなら地上でも地の果てまでも行きますよ、
 まぁ、滅多に地上に出る機会はないのですがね。」
どうやら、このピュロスを抜け出して、時々地上に出歩いているということか。
そういう人間(?)もいるんだな・・・。
その後、紹介を受けてタケルもガッチリとデュオニュソスと握手する・・・。
力強く温かい掌だ。
・・・でも酒くせぇ!!
デュオニュソスはタケルの顔を見てニヤッ・・・と、笑う。
ん?
どこかで・・・?

いや、気のせいか、見覚えなんかあるわけもない。
あるとしたら、地上で誰か雰囲気の似てる人間でも見かけた事があったかどうかと言うところだろう。
だが、その笑顔に親近感のようなものを感じたのは確かである。

さて、村の広場には、
簡素なテーブルと椅子が並べられ、
各テーブルには、燭台と、小皿にフルーツ、おつまみが乗せられている。
基本的にはスサの隊員全てをもてなすための席で、
村の人々は同席しない。
言葉が分からないのだから、無理させることはないということだろう。
それでも、宴席の周辺では村人たちが寄せ集まって、
誰かが号令をかけたら、一斉に各テーブルまで集まってきそうだ。
真ん中の大きなテーブルには、
デュオニュソスと、神官二名・・・そしてタケルとサルペドン・・・
華も必要と言うことでミィナも同席、
マリアさんは他の幹部と、村の長老格らしき数人とでテーブルを隣につける。