地母神デメテル ２４

　
それには黒衣のデメテルも意外だったようだ。
　「ほぉ？　地上の別の地域にもポセイドンの伝説があるというのか？」
サルペドンが、詳しい説明でも行おうか、
そう考えるよりも先に、タケルは記憶の端緒を口からこぼし始めた・・・。
　「確か・・・
　女神アマテラスオオミカミの治める天界で暴れはじめたスサノヲが・・・
　一人の女神・・・少女？
　彼女を突き殺し・・・確か馬を使って・・・？
　それでその事態を恐怖したアマテラスが・・・失踪・・・、
　世界に闇が訪れた・・・。」
　「ほぅ・・・興味深い話じゃな・・・。」
ここでサルペドンが解説を行う。
そう言えば、彼の父親だか祖父だかが、
ギリシア神話と日本神話の類似に着目して、
スサの創始者である緒沢家の先祖に近づいたと言っていたのだっけ・・・。
　「日本の神話にも幾つかの類型がある。
　スサノヲと言う神が一人の少女を突き殺したと言うのも、
　直接的な行為を隠すために使われた比喩表現で、
　殺害に皮を逆さに剥いだ馬を投げ入れたというのは、
　スサノヲが暴力を用いて少女を・・・、
　いや、少女というのもアマテラス自身だとする説もある・・・
　その女性を強姦し殺害に及んだとする研究もある。
　どちらにせよ、その後、地上が大混乱になったという話は共通のようだ。」

空気が重くなった・・・。
　「なんか・・・スサノヲも・・・ポセイドンも最低の神に思えてきたな・・・。」
そしてタケルはあの事を思い出す・・・。
自らが前回の村でしでかしてしまった、忌まわしい事件を。

自分がスサノヲだか、ポセイドンの子孫だとかは正直ピンとこないし、
信じるとかそんな事どうだっていい。
でも・・・もしその粗暴なる血が自らにも流れていたりしたら・・・。

そして彼は突然、
ある一つの思考に理性を奪われる・・・。
　スサノヲがアマテラスを殺した・・・！？

　愛する姉を？

　あの時・・・
　実家が・・・長年暮らしてきた家が突然吹き飛び・・・
　全てが崩壊したあの時・・・
　美香が命をかけて天叢雲剣を振るった時、
　自分の視界が開けて初めて見たモノ・・・。
　動かなくなった美香のカラダを貫く木材・・・