☆黒衣のデメテル・純潔のアテナ
すぐにタケルが応じると、 自然な動作で彼女はタケルを引き寄せた・・・。 「えっ・・・!?」 一瞬ドキッとしたが、タケルはすぐに理解した・・・。 それは男女の抱擁ではない・・・。 まるで母か年の離れた姉が、子や弟に向かってするそれのような・・・。…
騒がしかった宴の内容は省略してもいいだろう、 デメテルのこれまでの行動パターンで、大体どんな騒ぎになるかは想像つくだろうし。 翌朝、予定通り、スサは出立の準備を終える。 名残惜しいが、さわやかな気分でこの地を出発できる。 デメテルはこの後の道…
「・・・そうか、美香と、か。 どうだ? アテナは彼女と比べて・・・ いや、アテナに打ち勝ったお前は・・・美香を越えたと言えるのか?」 タケルは自嘲気味に視線をそらす・・・。 「ははっ、まさか、そんな・・・。 結局アテナさんは美香姉ぇじゃないし、 …
いつの間にか頭上の太陽も輝きを失い始めていた。 デメテルはとても興奮していたようで、ハイテンションのまま、宴の準備を部下たちに促す。 今晩はここで一泊することになりそうだ。 ・・・デュオニュソスの件があったからと言うわけでもないが、 明朝、こ…
「いえ、強かったですよ、アテナさん、 最後は・・・互いの男女の体格差、それだけが分かれ目です・・・。 互いが同じ条件だったら今頃・・・。」 それは確かに正論だが、 アテナにとっては元から織り込み済みの話だ。 それよりも・・・。 「タケルさん、あ…
ギャリィィーンッ!! 何が起きたのか・・・! アテナの右腕から槍が消えていた・・・。 いや、この空気を切り裂く音は・・・!? ・・・ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン・・・! この場で釘づけになっていた観衆の目に、 上空から落下してきたアテナの槍が、地面に深く…
違う・・・突進攻撃ではない!? アテナにもそれがわかった。 そしてこれがタケルの奥の手だと言う事も。 「いいわ!」 それに対しアテナも頭上で槍を旋回させる。 今までになかった動きを槍と筋肉に与え、そのカラダの潜在能力を最大限にまで引き出すつもり…
既に2人の戦いは一時間に及ぶ。 見ている者の体力すら限界に近い。 そして二人の息ももう・・・。 いや、タケル自身、アテナに脅威を十分感じている。 全神経を集中し、ここまで戦っている自分の体力もかなり疲弊している・・・。 なのにアテナは剣より重い…
まだよ! 地上で舞い踊るアテナ・・・! 彼女は自分の戦闘能力が、 戦いのさなか、どんどんレベルアップしてゆくことを理解した。 自分より劣っている者との戦い・・・それがどんなに退屈であった事か・・・。 この100年以上の長きにわたって、自分の腕を落…
アテナの絶対防御能力・「アイギスの楯」は、 互いのカラダをオブラートのように包みこんでいるが、 二人の武器にまではその効力を与えていない。 故に互いの攻撃は火花を散らし、 時に耳を覆いたくなるような金属音の雨を周囲にまき散らす! 結界にも似たそ…
いま、アテナとタケルは互いの顔を見ながら、足場や足元を確認する・・・。 周りでハラハラしながら見つめる者も多いが、当の本人たちはそんな心配などどこ吹く風だ。 そこでタケルが勝負の前にもう一つだけ確認する。 「あ、えっと、アテナさん、その白銀の…
戦いに使う武器は・・・やはり慣れ親しんだ天叢雲剣を・・・。 だが・・・。 剣を預かっていたクリシュナがタケルに向かうも、彼も一つの心配をする。 「タケル殿、 もし、戦いの最中に誤って天叢雲剣を発現させたら・・・ あのアテナ様の能力は物理攻撃は完…
さて話をデメテルの村に戻そう、 こちらも揺れが治まったとはいえ、 誰もが、驚愕や恐怖の表情を浮かべ、地べたに這いつくばっている。 アテナとデメテルは相変わらずだが・・・。 タケルですら、しゃがみっぱなしで辺りを警戒していたのだが、 もう揺れが起…
「・・・ゼウス様!」 ここは王都ピュロス。 運命を見通す3人のモイラ(モイライ)達の一人、 「現在」を視る真ん中のモイラの目が見開いた。 もっとも・・・その瞳に光は映らない・・・。 何かショッキングな物を見た時の、その女性の癖のようなものなのか…
そしてアレスはすぐに結論に達した・・・。 「ま、まさか、その潰れた片目・・・! あ、あり得ん! 生きていたのか!? いや、このピュロスに帰ってきていたのかっ!? 貴様・・・ゼウス様に逆らった反逆者・・・ 大地を揺する者・・・ポセイドンッ!?」 も…
こちらはタケルとアテナ・・・。 タケルがアテナの言葉に驚いたところであるが、 今さら彼の決意を鈍らせるには至らない。 そこで、その覚悟をアテナに伝えようとした時、 彼も、自分がいるこの辺り一帯の違和感に気づいた。 「アテナさん、おれは・・・ ん…
ついに毛深いアレスは怒声をあげた。 「舐めるのもいい加減にしろぉ! よかろう! しかし、貴様一人にこれだけの軍勢をあてる必要もない! おい! 4~5人で余裕だろう! ヤツを血祭りに上げろ!!」 すぐにアレスの背後からその人数の小隊が飛び出す! そ…
サルペドンは、これだけの大群を一人で前にしても、いかなる動揺も見せない。 これまでにも行ってきたように、 慣れた仕草で交渉を始める。 「私は地上から来た・・・スサの副司令官、カール・サルペドン。 戦の神、アレス殿とお見受けするが、相違ないか?…
さて・・・ タケルが女神たちの洗礼を受けようかとする間、 サルペドンは一人、デメテルのテメノスを抜け出していた・・・。 デメテルの村は、農産物の生育にふさわしいふくよかな大地・・・。 だが、それもどこまでも続いている訳でもなく、 固い岩盤と、さ…
なんだ!? アテナのカラダはすぐそこだというのに・・・、 手が・・・指が彼女に届かない! 指先はちゃんと動く・・・。 タケルのカラダに異常はない。 だが、アテナの体表から5センチ程以内にどうしても近づけない。 試しに肩以外も試そうとするが、どこ…
タケルにとって、 アテナの目的などはどうでも良かった。 勿論、彼女の都合などに付きあわされる義務など、元々ないはずだが、 図らずも、彼には一つの大きな目的が生まれていた・・・。 子供の頃からの大きな目標・・・姉・美香を越える・・・。 勿論、アテ…
その場の誰もが、アテナの行動に驚愕するも、 タケルを知るスサの仲間達が何よりも驚いたのは、タケルのその反応だ。 笑っている・・・!? いつもの呑気なタケルなら、 そのまま、怯えてしり込みするか、 相手が女性がある事を慮って、消極的な態度を見せる…
「えっ、そんな事言われたって、オレどうしたら?」 するとアテナは右腕に握りしめていた槍を高々とかざしたと思うと、 その穂先をゆっくり下ろし、うろたえてるタケルに向かって突きつけたのである。 「・・・難しく考えなくて結構です・・・。 この戦いの…
一方、村の広場では、その中心にアテナとタケルを残し、 デメテルの配下の者たちが、スサや村人たちを彼ら二人から遠ざけるように指示をする。 ・・・これはまさか・・・。 見ればアテナは先ほどの槍と楯を持ったままだ。 タケルは手ぶらである。 強いて言え…
サルペドンの表情に緊張が走る。 「戦神アレスか・・・!」 「当初、この村に入りこみ、そなたたちに奇襲をかけるとかぬかしておったが、 それは拒絶しておいた。 じゃが、わらわのテメノスの外で、と言うのなら、 もうそれはわらわにはどうする事も出来ない…
そこで話が長くなるのを察知して、 マリアが「皆さん、お座りになったらいかがでしょう?」と問うと、 デメテルが忘れものに気づいたかのように、笑い声をあげた。 「そうそう、よく考えたらゆっくりしている場合でもないのじゃ、 タケルよ、体調は回復して…
ここで、デメテルが興味深い話をタケルに告げる。 「タケルよ、神話においてアテナとポセイドンの関係を知っておるか?」 すいません、知りません。 正確には、聞いたことがあるようなないような、そんな程度の話だったけど、 確かギリシアの街の領有権をを…
さらっと、サルペドンは嘘を言う。 勿論、これまでの経緯をアテナに話したという部分は嘘ではない。 肝心なことを思いっきり、隠して平然とした顔を作る。 自分が数十年も嘘をつき続けていた事に罪悪感は感じつつも、 実際となると、堂々とした態度をとれる…
男女見境なく、ふざけて抱きついてきたデメテルの今までの抱擁とは、 明らかに様子が違う。 一体、この女性は何者なのか? ・・・だがすぐにタケルの疑問は解き明かされる。 体を離したデメテルは、その彼女を上座に立たせ、 タケルや、宴席の一同に彼女を紹…
タケル達が、宴席に戻ろうとする間に、 このアクタイオスとかぬかす長衣の男は哀れにも、 本性の一端を露わにしたデメテルに怯え、腰をぬかしそうになりながら逃げ出して行った。 「ん?」 当然、タケル達には状況は分からない、 何かあったのかと、タケルは…