Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」17

 
こちらはピュロス王国・王都ピュロス・・・。
壮麗なるゼウス神殿の奥深くで、
全てを見通すモイラ達が、今「嘆きの荒野」で行われているタナトスとタケルの戦い・・・、
いや、タナトスによる一方的な処刑を見守っていた。
「現実を視る」二人目のモイラは、
その超自然的な透視能力により、
白い霧などに阻害されることなく、二人の様子を映し見ていた・・・。
 「・・・只今、タナトス様が、アトランティスの後継者、
 雷の剣を持つ者の生命を吸い取りました・・・。」
彼女たちの主人、黒雲操るゼウスは、そのまま予定通りの報告を聞き微笑んだ。
 「うるさい蠅も、ここで一貫の終わり、と言うヤツだな。
 ・・・ま、肝心の敵はポセイドンただ一人だ。
 後はタナトス自身がポセイドンに出くわさずに、どこまで奴らを食いつくせるか、だな。」

彼らにとっては全て予定通り・・・。
しかもこの光景すらも、少し前にモイライの長女、「未来を見通す」モイラも視ていたのだ。
何の異常も想定外の事態もない。
それだけのことだったのだが、
末の妹・・・「過去を知る」モイラが、自分の能力とは関係ない所で、一つの違和感に気づいた・・・。
上の姉の様子がおかしい?
三人の姉妹は目が見えない。
だが、その精神感応能力はずば抜けて優れている分、本来の能力以外の部分でも、
高い観察能力を誇るのだ。
そして妹が感じた姉の異常とは・・・。
 「上のお姉さま、何か・・・?」
震えている・・・。
目を閉じている彼女たちの一人が、青ざめながら大量の汗をかき始めていた・・・。
 「お姉さま? な、何を察知したのですか?
 何か良くない未来でも!?」
その異常なる気配はゼウスにも感じ取れた。
 「・・・どうした? 何かあったのか?」
ここで初めて「未来を見通す」モイラは、震える声で危急の事態を告げたのだ・・・!
 「も、申し上げます!
 私の視ていた未来に、得体の知れない何かが侵食してきました・・・!
 突然・・・私のビジョンに突然現れたのです!
 でも視えない! それが何なのか視る事が出来ない・・・。
 まるで激しい光を焚かれたのごとく、私の眼にもはっきりとは映らないのです!
 ですが、この巨大なエネルギーは!?
 大地を覆う・・・天を引き裂くほどの激しい鼓動!!」
呆気に取られるゼウスと、末妹のモイラ・・・。
止む無くゼウスは、現実を見る真ん中のモイラに目を向けるが、
既に彼女も、自分の能力の中に違和感が生じ始めているのに気づいていた・・・。
 「・・・何かが・・・何かが生まれようとしています・・・!
 光が・・・鼓動が・・・波動が・・・どんどん大きく、激しく・・・、
 ダメです! もう私の能力では捉えようがありません!
 私の見ている光景が全て黄金色の光に呑み込まれていきます!
 これ以上は・・・視ている私が危険です!!」