Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

☆生命を吸うタナトス

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」44

もし、美香本人が生きて彼らの質問に答えるならば、 もっとはっきりとした意見があったのかもしれない。 彼女なりに解釈し終えた縁起や、教義の説明も可能だったろう。 だが、この場にあるのは、彼女の本心に残されていた、自らの家系に残されていた数々の疑…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」43

それはハデスについても同様の感想を得たようだ、 改めて、術者である自分の口から美香に同じ事を聞いてみる。 「そなた達は、自らの祖神を恐れているのか」、と。 またもや美香の魂に沈黙が生まれた・・・。 聞かれたことには抵抗なく答える、 だが、言葉に…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」42

美香の独白の途中で、 ゼウスも独り言でも漏らすかのように自らの口を開く。 「・・・この話・・・似た話を聞いたことがあるな。 我々の正史ではなく・・・確かポセイドンのかつてのテメノス・・・、 パキヤ村の最長老、ネレウスの伝える過去の災厄・・・。…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」41

その隙に、ついに好奇心を抑えきれずヘルメスが小声で質問をする。 「ね、ねぇっ? ハデス様、 しゃべって貰うって、こいつ、素直に言うことを聞くの?」 「それは心配いらん。 『死んだ者の魂』とは心を亡くした意識の残りカスだ、 そこには意志も疑問も思…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」40

態勢は座ったままであるが、ハデスは再びその腕を伸ばし、 指をいっぱいに広げ、美香の頭部から頬にその手のひらをかざした・・・。 実際に触れることはないようだ。 もっとも・・・その先に手を伸ばしたところで、 「それ」は物質ではないのだ、・・・触る…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」39

白い気体の上に浮かんだ顔は、 紛れもなく、かつてタケルをかばうようにして命を失った緒沢美香のもの・・・。 それがワイングラスの上に、 まるでホログラフィのように浮かんでいるのである。 最初は白い凹凸だけだったその顔も、今では色がうっすらと付き…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」38

いったいこれから何が始まるのか? ここから先、 周りに控えるものは、身動きはおろか、咳払い一つ許されない・・・、 そんな空気となっている。 いまだ、情景に変化が起きている風はない・・・。 ヘルメスが辛抱強く見守っているが、何も変わる様子はない・…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」37

その間ハデスは目を伏せ、 自らの意識に、強制的に流し込まれる膨大な光景を観続けていた。 通常の人間では、 モイラから送られてくるデータをまともに読み取ることもできなければ、 受け取ったとして、圧倒的なスピードで送られてくるその莫大な情報量で、 …

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」36

「過去を知る」モイラは目を瞑ったままうなずく。 ハデスは半分飲みかけのワイングラスを置き、 後ろに控えている「神の女奴隷」に、もう一度グラスに注ぎなおすように要求した。 「ゼウス様もご存知でしょうが、 私の能力では『そこに存在しない者』『私が…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」35

まぁ、彼女に責任はない、 途端にゼウスは笑い始めた。 「ハッハッハ、別にお前たちを責めるつもりはない、 気にするな? ・・・それで私は考えたのだ。 あの裏切り者、ポセイドンは何故、かつて敗れたこの地に戻ってきたのか? 我らに勝てる算段を見つけて…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」34

三姉妹モイライも、勿論オリオン神群に名を連ねるものではある。 だが、自らのテメノスを持たず、ゼウスの「目」の役に徹する彼女たちは、 優雅な暮らしを保障されながらも、このゼウス宮殿を出ることもなく、 神々の王ゼウスただ一人に仕えているのである。…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」33

さて、テーブルは4人掛け用で、天井を鏡のように映す、 黒大理石の周りに彼らは全員、席についた。 上座は当然、ゼウスが豪勢な椅子に座り、 テーブルの両側にハデスとヘルメスが・・・。 「二人とも、まずは喉を潤してくれ・・・、 ハデス、そなたを呼んだ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」32

・・・少年のように小柄な男性が、 後ろに陰気な男を連れている。 少年といっても、顔立ちや体格が少年に見えるというだけで、 結構な年の・・・、 以前も登場した、ひねくれていそうな育ちのオリオン神群ヘルメス。 今日、王都ピュロスに参上したのは、 後…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」31

タケルの説明に、おかしい所や不審な点はない。 何より、タナトスの能力を知っているサルペドンには、 その状況が手に取るようにわかる。 一応、結果だけタケルに伝えるか・・・。 「お前が倒れている所で、死の神タナトスと思しき人物が、 生気を吸い取られ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」30

「・・・。」 ん? なんか・・・頭痛ぇ・・・。 「・・・う~ん・・・」 タケルが目を覚ました・・・。 目を開けると、その前にはテントの屋根があり、 周りにはマリアさんとミィナが、ほかの傷病者に手当てを施していた。 なお、 タケルの瞳は黒いままであ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」29

散り散りになったメンバーが、無事にようやく戻ってこれたのは、 ミィナを含め一時間足らずといったところだ。 そして・・・、 もはや物言わぬ死体となった者達の発見にも、そんな時間はかからなかった・・・。 哀れな犠牲者たちを発見したのはグログロンガ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」28

ミィナの足元の感覚が一瞬、消える・・・! 「うわぁっっ!!」 ガラガララッ・・・ 目前で急に足元の岩場が崩れ落ち、 ミィナのカラダが半分それに合わせて落下する・・・! いや、何とかぎりぎりで、しゃがみこみ、カラダの重心を後ろに逸らす・・・。 「・・…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」27

「・・・あっれぇ~? ここ、どっこぉ~・・・?」 さっきまでは目印に使えそうな岩柱も見えていたのだが、 この辺りには一本も生えていない・・・。 霧だけはさっきと変わらず立ち込めたままだが・・・。 半分、何していいかわからず、ミィナはイラつきなが…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」26

そして肝心の、 凄惨なる虐殺が繰り広げられた場所では、 一人、黄金色の瞳の巨人がその場に立ち尽くしていた・・・。 何をするわけでもない。 自分が殺したつまらない生き物の死体を静かに見ているだけらしい。 他人がこの現場を発見したら、身の毛もよだつ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」25

スサ本隊では、マリアの感知能力がようやく使用可能となっていた。 「運命の女神」モイライ程の精度があるわけでもないが、 彼女にしても、先ほどの嵐のような精神エネルギーの爆風を、 まともに受けるわけにはいかなかったのである。 とは言っても、今現在…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」24

もう、タナトスには何も残っていない・・・。 体力も、攻撃能力も・・・、 そして命の灯火もあとわずか・・・。 辛うじて、せめて全てを見届けようと、 視線を「男」に向けてはいるが、 もう何もできやしない・・・。 一方、鬼人の形相を備えた「男」はここ…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」23

胃液の逆流に耐えきれず、タナトスはうずくまるよりも早く、 胃の中の物を地面に吐き出してしまう。 限界以上に摂取した物は、食物ではなく生命エネルギーなのだが、 タナトスのカラダは、代償反応として嘔吐と脱水症状を起こしたのである。 彼の皮膚からは…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」22

「・・・私は死を司るタナトスだぞ! 貴様が何者であろうと、その命を喰らい尽してやる!!」 タナトスはその右腕を前方に突き出した! だが、その手に集まるエネルギーは先ほどの物と違う。 「男」の未知の脅威を警戒したために、 タナトスは次なる能力を使…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」21

バリバリバリ・・・! 突然、「男」の右腕に握られていた剣からも変化が生じる。 白い霧の世界に再び青白い光が迸り始めた。 ・・・だが、先ほどと違う事は、 その放電が、持ち主の意志によって生まれたものではなく、 むしろ器物の拒否反応としての現象である…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」20

・・・その凄まじい精神エネルギーの震源地、 タナトスと「その男」が向かい合うその地では、 新たな局面が生まれようとしていた。 完全に立ち上がったその男は、 輝く瞳を以て、タナトスの姿を認識するまでに至っていたのだ・・・。 身長2メートル? いや…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」19

荒れ狂うエネルギーの影響を受けたのは、近場にいるスサだけの訳もない。 最寄りのデメテルのテメノスはじめ、 これより向かう、ヘファイストスのテメノス・パキヤ村・・・、 その大地の唸りは、王都ピュロスのゼウス神殿すらも崩す勢いで揺れ続けたのだ! …

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」18

死を司る神、タナトスは、後ろを振り向いたまま固まっていた・・・。 命を奪った・・・生命力を全て吸い尽した筈の男から、 途方もないエネルギーが迸りはじめたのを感じたからだ。 それどころか、 大地に倒れているその男の指が、ビクビクと痙攣を起こし始…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」17

こちらはピュロス王国・王都ピュロス・・・。 壮麗なるゼウス神殿の奥深くで、 全てを見通すモイラ達が、今「嘆きの荒野」で行われているタナトスとタケルの戦い・・・、 いや、タナトスによる一方的な処刑を見守っていた。 「現実を視る」二人目のモイラは…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」16

・・・死の神タナトスは、自分の視界に3人の男の死体が横たわっている光景に満足し、 マントを翻してこの場を後にしようとする・・・。 「生命力を喰らう」行為のせいなのか、 その肌は血色もよく、瑞々しさに溢れている。 年はポセイドンたちより一世代若…

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」15

タケルの身長は2メートルに及ぶ。 タナトスも長身とはいえ、大体180センチくらいだろう。 如何にタケルの体力が0に等しくなっているとはいえ、そのカラダを支えるのは難儀するらしい。 タナトスは紋章のチェーン部分を引き絞り、まるで猛獣を封じ込める…