Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」18

 
死を司る神、タナトスは、後ろを振り向いたまま固まっていた・・・。
命を奪った・・・生命力を全て吸い尽した筈の男から、
途方もないエネルギーが迸りはじめたのを感じたからだ。
それどころか、
大地に倒れているその男の指が、ビクビクと痙攣を起こし始めている。
死んだはずの・・・タケルの指が、
まるで昆虫の肢のような動きで地面をかきむしる・・・!
いや、その動きには意志がある!
目的がある!
地面から起きあがろうとするその姿に、
タナトスは信じられないとでもいうように大声をあげた・・・!
 「バカな! 動ける筈がない!
 生きている訳もない!!
 ・・・全てだ・・・生命は全て吸い取ったのだぞ!?」
だが、同時に、タナトスは驚いていられる余裕をも失う。
先程からの断続的な鼓動は、
もはや大地を激しく揺るがしはじめるに至ったからだ。
 ズズズズズズズズズズズ・・・!!
タナトスは倒れないように片腕を地面に支え、中腰のまま身動き一つできず、
今、この場に起きている理解不能の現象に直面するだけだったのだ。
 「で、でかい・・・自然現象じゃあない・・・、
 これは大地を揺する・・・ポセイドンの能力か!?
 いや、あり得ない・・・こんな巨大なエネルギーなど・・・
 これはゼウス様をも遥かに上回る・・・そんな能力などあるはずも・・・!?」
タナトスが、あまりにも巨大すぎるエネルギーに、注意を取られたことは仕方ないことだろう。
だが、タナトス自身、それよりももっと恐ろしい事が起きている事に気づき、
「それ」から目を逸らしてしまったことを後悔する。

・・・そう、先ほど命を吸い尽してしまった男が、
今や、この鳴動する大地の上に、完全なる姿で立ちあがっていたからだ・・・。

この巨大な異常現象に驚愕しているのは、
タナトスだけの訳もない。
オリオン神群の襲撃を、やり過ごそうと考えていたサルペドン達にとっても同様だ。
 「・・・なんだ、この揺れは!?」
傍にいたマリアも、この現象を理解すらできず叫び声をあげる。
 「サ、・・・サルペドン、これはあなたの能力ではないのですか!?
 これは・・・明らかに精神エネルギーによって起こされたものですよ!?」
 「私じゃあない! こ、こんな途方もないエネルギーなど、私には・・・!!」