Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」24

 
もう、タナトスには何も残っていない・・・。
体力も、攻撃能力も・・・、
そして命の灯火もあとわずか・・・。

辛うじて、せめて全てを見届けようと、
視線を「男」に向けてはいるが、
もう何もできやしない・・・。

一方、鬼人の形相を備えた「男」はここに至るまで、一言の言葉も発してはいない。
言語能力はあるのか?
それとも記憶でも失っているのだろうか?
その黄金色の瞳の奥で何を考えているのだろう?
目の前のタナトスから、必要以上の生命力を吸い取った「男」は、
虫の息となったタナトスを見下ろすと、
しばらくしてから・・・自分の口元を釣り上げた・・・。
そしてその指先をタナトスに向ける。

 「・・・あ、あ・・・?」
タナトスのカラダが異変を・・・。
いや、身動き一つできなくなったかと思うと、
自分のカラダが、視えない巨大な何かで掴まれたような錯覚に陥った!
そしてその感覚は間違いではない!
男が指先を徐々に角度を上げていくとともに、
タナトスのカラダが勝手に宙に浮きあがっていく・・・!
 「ひ・・・ひ!?」
眼前の男はけたたましく笑いながら、ゆっくりと上昇してゆくタナトスを見上げるに至る。

 「な、な・・・何をするフ るもりラ・・・ ?」
男は何も答えず笑うのみ・・・。
そして、今や立てられた状態の一本の指を、
悪戯っぽく、軽く指先を旋回した・・・。
 「あ・・・助げ・・・! あっ、あっ! ヴァッ・・・ 」
タナトスの首が徐々に曲がり始める・・・。
どんなに自分の首の動きを拒否しようにも、その力は余りにも強大・・・!
もはやその力は、首の可動域の限界を超え・・・

 ボギィッ!!
 ・・・ボギギッ ギィッ・・・!
耳を覆いたくなるような、鈍い音が続いた!
その首は、一回転、二回転・・・いや、何度回転したのか、
もはやタナトスの首は異様に伸び切り、気味悪くねじれている・・・。
・・・最後に「男」は指先を下に振り下ろし、
まさしく糸が切れたように、タナトスは落下する。

もう二度と動かない・・・。
これが、死を司る神と呼ばれたタナトスの、醜く哀れな死に様である・・・。