Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」31

 
タケルの説明に、おかしい所や不審な点はない。
何より、タナトスの能力を知っているサルペドンには、
その状況が手に取るようにわかる。
一応、結果だけタケルに伝えるか・・・。
 「お前が倒れている所で、死の神タナトスと思しき人物が、
 生気を吸い取られ、首を折られて死んでいた・・・。
 誰がやったのかはわかっていない。
 それと、スサにも被害が7人・・・。
 タナトスに命を抜かれた者と、運悪く敵の矢に致命傷を受けたものだ・・・。」
急にタケルの顔が険しくなる・・・。
当たり前だ・・・。
 「7人も・・・。
 ちくしょう・・・! もう一息で敵の本拠地だってのに・・・。
 で、でもよ、タナトスが生気を吸い取られてって・・・どういうことだい?」
 「・・・さっぱりわからないんだ・・・。
 それでお前が目を覚ますのを待っていたんだが・・・。
 ああ、後それと、凄まじい地震があった。
 それもお前は気づかなかったか?」
 「地震!? いいや!
 そういや、デメテルの村でもでっかいのあったな?
 あれの余震か!?」
どうやら、それも本当に知らないようだ・・・。
一しきり、今の状況と、これからの作戦をタケルに伝えると、
また再びゆっくりとサルペドンは席を離れる。

ここに来て、サルペドンにしても、この旅のさなかにしばしば起きる、
予想すらできない不審な事態に、胸をざわつかせていたのである。
シルヴァヌスの村での異様な気配・・・、
デュオニュソスの意味不明の行動・・・、
そして・・・。

彼の不安に似た怖れは、遠く離れた王都ピュロスの主、
黒雲操るゼウスにしても、同様の不安を覚えていたのである・・・。