Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」32

 
・・・少年のように小柄な男性が、
後ろに陰気な男を連れている。
少年といっても、顔立ちや体格が少年に見えるというだけで、
結構な年の・・・、
以前も登場した、ひねくれていそうな育ちのオリオン神群ヘルメス。
今日、王都ピュロスに参上したのは、
後ろの男性・・・冥府の神ハデスを連れて来る役目だったようだ。

 「ゼウス様ぁ~、ただいま、お連れしましたよぉ~?」
軽い足取りでゼウス神殿を駆け上る様は、
あまり礼儀正しいとも思えないが、
特にゼウスも気にも留めていないのか、
軽く右手を上げて、この少年神と、後からゆっくり上ってくるハデスに目を向けた。
 「うむ、ご苦労だったな、
 そこにテーブルを用意しておいた・・・。
 ハデスも適当に座るが良い・・・。」

特に食事の用があるとき以外、ゼウスの近くにテーブルが出される事も珍しい。
「神の女奴隷」がハデスたちの席ににワインを注ぐ間、
ハデスは自分が呼ばれた訳を考えていた。
遣いのヘルメスは、その理由をハデスには告げなかった。
というより、ゼウスから聞いていなかっただけである。
聞いたかもしれないけど忘れてしまった・・・。
あまり自分に関係がなければ、大して興味もわかない。
ゼウスも、ハデスも、このひねくれ少年神の性格は、
すでに把握しているので、そんな事で一々、突っ込んだりもしない。
第一、重要な知らせがある場合には、
「虹の神」イリスが遣わされるのが慣習となっており、
スピード重視のときはヘルメスのほうが手っ取り早い。
どちらもその能力をフルに使えば、スサにとって脅威の暗殺者ともなりうるのだろうが、
二人とも、そういう殺伐とした行為を得意とするわけでもないので、
幸運なことに、これ以上スサの犠牲が増えることはないだろう。
神々の王ゼウスにしても、これ以上、スサの始末を誰が取るべきなのか、
今日の会合ではっきりさせるべきだと考えている。