死の神タナトスと、解き放たれた「魔」33
さて、テーブルは4人掛け用で、天井を鏡のように映す、
黒大理石の周りに彼らは全員、席についた。
上座は当然、ゼウスが豪勢な椅子に座り、
テーブルの両側にハデスとヘルメスが・・・。
「二人とも、まずは喉を潤してくれ・・・、
ハデス、そなたを呼んだわけはその後で話そう。」
別にハデスは慌てる事も、緊張することもなく、
このワインを造ったのが、デュオニュソスなのかな、と、
さっきまでの考え事は一旦、棚に上げ、
自分の宮殿でも滅多に飲めない、極上のワインの余韻を楽しむことにした。
・・・まぁ、話はそれからでもいいだろう。
といっても、空気を読まないヘルメスが、
気が短いためか、とっとと本題に入りたがっているようだ。
「ねぇ、ゼウス様ぁ、どうせ、あの地上のゴミクズどもの話でしょう?」
そう言われれば、ゼウスも苦笑するしかない、
片手にワイングラスを持ちながら話を始める。
「・・・そう急くな、
だが、焦らすつもりもないし、まぁいいだろう。
・・・知っての通り、いよいよ奴らは王都ピュロスに近づこうとしている。
それに幾つか、気になることも出てきたのでな、
ハデス、少しそなたの力を借りたい。」
ハデスは一度、グラスを置く・・・。
「・・・タナトスが殺されたことは聞きました・・・。
このままだと、パキヤ村を通り、
そしていよいよ、私のテメノスに・・・。
勿論、私も奴らを通すことなど考えてませんが、
今、この状況で私の力を借りたいとは?」
いよいよ本腰を入れてゼウスは話を始める。
彼の心中では、
スサをどのように把握しているのか・・・、
いや、ポセイドンの血筋を・・・。
「うむ、その前にもう一人、このテーブルに座らせたい者がいる、
『過去を知るモイラ』よ、遠慮は要らぬ、
その末席に座るがいい。」
『過去を知るモイラ』よ、遠慮は要らぬ、
その末席に座るがいい。」