Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死の神タナトスと、解き放たれた「魔」34

 
三姉妹モイライも、勿論オリオン神群に名を連ねるものではある。
だが、自らのテメノスを持たず、ゼウスの「目」の役に徹する彼女たちは、
優雅な暮らしを保障されながらも、このゼウス宮殿を出ることもなく、
神々の王ゼウスただ一人に仕えているのである。
盲目の彼女は、「神の女奴隷」の一人に誘われて、空いている椅子に腰を落ち着ける。
ニヒリスティックなハデスが何のデリカシーも見せずに、
自分の思ったことを口に出す。
 「珍しいですな、モイラを同じテーブルに座らせるとは、
 しかもたった一人で・・・。」
別にハデスには侮蔑も悪意もない。
本当に正直な感想だけなのだ。
これはヘルメスについても同様なのだが、
権力の座に就いている事と、
地上のような人付き合いなど無縁の生活を送る、彼らの習慣からくるものであろう。
そしてゼウスは本題に入る。
 「数日前、
 タナトスが奴らを討とうとしたとき、とてつもない地震がこの地底世界を襲った・・・。
 勿論、自然現象ではないし、
 裏切り者ポセイドンの能力を遥かに上回るパワーだった。」

 「・・・私の宮殿も、一部損壊がありましたよ、
 死者は幸運にも出ませんでしたが、怪我人も多数・・・。」
 「うむ、今後、あれだけのエネルギーを使われれば、
 このピュロスそのものが崩壊する危険もある。
 そこで、これ以上の被害が出ないうちに、
 完全にあ奴らを根絶やしにしたいのだが・・・、
 なぜ、あれだけの力を持つものがいるのか、いま一つ理由も正体もわからない。
 モイライに戦闘を見つめさせ続けていたのだが、
 あの閃光のような精神エネルギーの爆発に、
 今現在も、正常な能力が回復しないでいる。
 まともに使えるのは、今、そこにいる『過去を知る』モイラだけだ・・・。」
途端に肩をすぼめる末妹のモイラ。
 「も、申し訳ありません・・・。」