死の神タナトスと、解き放たれた「魔」36
「過去を知る」モイラは目を瞑ったままうなずく。
ハデスは半分飲みかけのワイングラスを置き、
後ろに控えている「神の女奴隷」に、もう一度グラスに注ぎなおすように要求した。
「ゼウス様もご存知でしょうが、
私の能力では『そこに存在しない者』『私が認識できない者』は呼べませんが・・・、
その為にモイラがここにいると、解釈して良いのですか・・・?」
「そうだ、彼女がいれば可能だろう?」
そのゼウスの言葉を待っていたかのようにモイラは立ち上がる。
「・・・ハデス様さえよろしければ・・・。」
どうやら、これから行われる「術」にはモイラの協力が必要らしい。
もっとも、別にハデスは気にも留めていないようだ。
「私のほうはいつでも構わない、
このグラスがいっぱいになったら始めるとしよう。
・・・おっと、先に言っておくか?
ヘルメス、私がこれから行う儀式はデリケートなものだ、
大人しくしているのだぞ?」
なんか、ヘルメスはその言葉に不満らしい。
「え~、まるでオレが落ち着きない奴みたいじゃないすかぁ~!?」
本人も少しは自覚しているのだろうか?
その間、モイラはテーブルを伝って、ハデスの背後に回りこんだ。
そして、緊張しつつ、「失礼・・・します」とだけつぶやいて、ハデスの頭部に両手を這わせる・・・。
「それでは・・・
この私めが覗いた世界を、時間を・・・ハデス様の精神に流し込みます・・・!」
「やれ・・・。」
モイラの白目が開き、精神集中が始まる。
彼女の専門能力は過去に起きた出来事を透視すること!
モイライだけに留まらず、精神感応能力を持つ者は、
本来、精神をカラダから遊離させるタイプか、
思考状態を無にし、自分の心を開放して流れ込んでくる情報を蓄えるタイプと二通りある。
前者がシャーマンタイプ、
後者がトランスタイプと呼ばれている。
しかし、今モイラが行っているのは、既に自分が取り込んだ情報を、
余計な情報をシャットアウトしつつ必要なデータのみをハデスの精神に送り込む作業、
それは本来の彼女の能力ではないため、かなりの集中と努力を要求されるのだ。
その間、モイラはテーブルを伝って、ハデスの背後に回りこんだ。
そして、緊張しつつ、「失礼・・・します」とだけつぶやいて、ハデスの頭部に両手を這わせる・・・。
「それでは・・・
この私めが覗いた世界を、時間を・・・ハデス様の精神に流し込みます・・・!」
「やれ・・・。」
モイラの白目が開き、精神集中が始まる。
彼女の専門能力は過去に起きた出来事を透視すること!
モイライだけに留まらず、精神感応能力を持つ者は、
本来、精神をカラダから遊離させるタイプか、
思考状態を無にし、自分の心を開放して流れ込んでくる情報を蓄えるタイプと二通りある。
前者がシャーマンタイプ、
後者がトランスタイプと呼ばれている。
しかし、今モイラが行っているのは、既に自分が取り込んだ情報を、
余計な情報をシャットアウトしつつ必要なデータのみをハデスの精神に送り込む作業、
それは本来の彼女の能力ではないため、かなりの集中と努力を要求されるのだ。