Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス36

 
 「あーっと、お邪魔しますよ・・・?
 ネレウス様、そろそろお時間ではございますが・・・。」
タケルたちが振り返ると、先ほどのネストールが戻ってきていた。
時計を見たら、既に洞窟に入ってから一時間が過ぎている・・・。
どうやら・・・
戦いが始まらざるを得ないようだ。
サルペドンは一度ネストールに確かめる。
 「ネストール殿、
 一度、ヘファイストスに話し合いを行う機会は設けられるだろうか?」
サルペドンには、先代ヘファイストスを巻き込んでしまった負い目がある。
悲劇は繰り返したくはない。
もちろん、タケルにしたって無駄な殺し合いなどまっぴらだ。
だが、ネストールにその回答を行う権利もありはしない。
 「サルペドン様の申し出は伝えてみますが・・・、
 あの方のおられる立場を考えるのであれば、
 却ってそれは酷な願いかもしれませんよ・・・。」

仕方がないのだろうか・・・。
もし戦いになれば、どちらかが命を落としかねない。
勿論、ゼウスの居城に着く前にタケルに倒れられるわけにもいかないし、
ここパキヤ村において、ポセイドンの能力を使うわけにもいかない。
オリオン神群の中でも穏健な性格たるヘファイストスを、
二代に渡って、苦しめねばならないなんて・・・。

ネストールはタケル達を案内するかのように、背中を向けた。
その腕はみんなを促すかのように、差し出されたまま・・・。
タケルも戸惑いながら、ついて行くしかない。
サルペドンは最後尾から、後を追おうとしたとき、
それまで静かにしていたネレウスが、今一度サルペドンを呼び止める。
 「あの・・・もし?」
 「ん? なんでしょう、ネレウス殿?」
 「あの・・・タケル様の首元に架けられた円形の飾り・・・あれは一体?」