Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス35

 
サルペドンもタケルも、
ミィナの反応に「おや?」とは思ったのだが、
二人とも色々考えることが有り過ぎてそれどころではない。
この時、ネレウスを除いてだが、
一番冷静だったのが、クリシュナだった。
 「今、確かに天使と仰ってましたな?
 そうですね、キリスト教の文化だったら『天使』ということになるのでしょうか?」
 「あ、あ、あたし、そんな事、言ったんだ?
 はは、気にしないでくれよ、
 悪いけど、こっちの話ってあんまり良く知らないんだ、
 話、戻してくれて構わないからさ?」

空に浮かぶ羽の生えた子供・・・、
このイメージで「天使」を想像するのは不自然ではない。
故にタケルもサルペドンも、すぐにミィナの反応を忘れた。
だが、同時に、
彼らは完全に忘れてもいたのである・・・。
ミィナの生まれ育ったウィグルの伝説では、
近い未来、天使がその村に生れ落ちることを・・・。
今までウィグルの村に伝わる話は、
誰もが、スサノヲやポセイドンの復活譚の一類型と思われたのだが・・・、
ミィナの率直な感想は、この壁画に描かれている翼の生えた子供こそ、
自分の村で伝えられてきた存在にしか思えなかったのである。
 月の天使・・・
だが、それを口に出して言ってしまえば、
まるで自分が、タケル達の仲間であることを否定することになってしまいかねない。
 ・・・いや、考えすぎ・・・。
 そうだよ、だって、今はそんな事を考えている場合じゃない・・・。

そしてすぐにミィナは、
自分の頭の中から、そんな無意味な思考を追い出してしまったのである。