Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス38

 
さて、
いよいよこの村の現在の主、ヘファイストスが出陣する。
頑丈そうな胸当てと、滑らかな動きを保持した手甲を装着し、戦の支度をしているのだが・・・。
頭のてっぺんが光り輝くヘファイストスは、落ち着かなく周りの召使に話しかける。
 「あー・・・、手紙は届いていないのか、戻ってきてもいないのか?」
 「ヘファイストス様、今日は何も届いておりませぬ。」
まだ諦めない様子のヘファイストス
 「んー、ではアフロディーテ本人もやってくる気配はないのか、ないのだろうか?」
 「・・・それは私めには・・・?
 ただ、これから血生臭い戦いの場が始まると言うのに、
 あの方がやってこられるとも考えづらくありませんか?」
ようやく兜も頭に乗っけたはいいが、うまく結び目を結わえることもできず、
召使のコメントに我慢できないらしい。
 「なんということだ、なんということだ、
 将来を約束した仲なのに、この命を賭けた一戦に、
 その婚約者の身を案ずる行動も見せぬとは・・・!
 あああ、愛しのアフロディーテ、そなたはいずこにありしや、
 そなたの心はいずこを彷徨っているのであろう?」

召使は精一杯、同情しているも、同時に心の中では、自分の主人に突っ込みを入れていた。
 (あの美しい女神様が、この中も外もパッとしないヘファイストス様に心を傾ける筈もなぁ・・・、
 やっぱり無理があるよなぁ・・・。
 いくらゼウス様の褒章とはいえ、アフロディーテ様だって耐えられないだろうに・・・。)
内情をぶちまけると、
この代になってから、ヘファイストスのゼウスに対する忠義振り、
そして、パキヤ村をうまく統治していることへの恩賞として、
ゼウスが、オリオン神群一美しいとされるアフロディーテヘファイストスを婚約させたのだ。

勿論、牧歌的とも言えるヘファイストスの人の良さは、
パキヤ村の住人であろうと、周りのオリオン神群であろうと定評がある。
しかし、稀代の美貌を誇る女性の身にしてみたら、彼はあまり魅力的とも言えない。
ヘファイストスの作る装身具やアクセサリーは女神も満足なのだが・・・、
このオヤジ臭い不具者では・・・やっぱり、ねぇ?
ちなみにアテナのアイギスの盾は先代ヘファイストスが・・・、
そして、タケル達が最初のころに出会ったアルテミスの弓は、
ここにいるヘファイストスの作品である。