Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス37

 
うん?
それは「紋章」のことだろうか?
 「・・・ああ、あれは彼の先祖から、代々受け継がれているという一族の証であり、
 彼が振るう雷の剣を持つ資格とも言える。
 それが・・・何か?」
その説明を聞いて、ネレウスはしばらく考え込んでいたようだ。
だが、やがて一つの結論に達したのか、
ゆっくりその白い髭に覆われた口元を開く。
 「左様でございますか・・・。
 するとつまり、
 あの首飾りは・・・ポセーダーオンの血筋を示す為の物、
 と考えてよろしいのでしょうか?」
 「何か・・・気になるところでも?」
 「いえ、それほどの事は・・・。
 強いて言えば、この場であなた様を呼び止める口実のようなものでございますよ・・・。」
サルペドンに緊張が走る。
・・・もう、タケル達は先に行ってしまった・・・。
 「まさか、ネレウス・・・。」

そこでヨタヨタと老人は膝をついてしまう。
お付の者がカラダを支えようとしても、ネレウスはその強靭なる意志で動こうとはしない。
 「大変・・・大変、申し訳ございません・・・。
 あなた様を長年、欺くような振る舞いをしてしまい・・・。」
やはり、この老人は気づいていたのだ。
サルペドンがかつての主であることに・・・。
 「・・・ショックは受けている・・・。
 だがネレウスよ、そなたを恨んだり、責めるような気持ちは毛頭ない。
 それより、私が逃げ出してより、ゼウス達の嫌がらせなどは有りはしなかったのか?」
 「いえ、それはほとんど・・・。
 アテナ様やデメテル様が、
 お身体を張って、我らに被害を受けぬようになさって頂きましたゆえ・・・。」
サルペドンは唇をかみ締める・・・。
 「そうか・・・。
 全く私は、仲間に恵まれていたようだ・・・。
 ここまできたら、どうあってもゼウスの野望を止めなければ・・・な!」