Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス46

 
だが・・・。
 「恐れながら・・・。」
 「構わん、ネストール、申せ、申してみよ。」
 「私も戦わずに済むのなら、それが一番好ましいと思うのですが・・・。」
 「ですが? ですが何じゃ?」
 「問題はあの方々・・・スサがゼウス様に勝てるかどうかの話なのでは?
 彼らが次のハデス様や、ゼウス様に負けるというのであれば、
 ここを黙って通したヘファイストス様に、何らかの処罰が・・・。」
すると、「そんな大事なことを忘れてた!」とでもいうようにヘファイストスの表情が一変する。
それは困り果てた顔から、怯える者の表情への変化だ。
 「そ、そ、そうだとも、そうだとも、
 わしはこれだけゼウス様の恩義を受けておきながら、
 それすらも忘れるところであった。
 やはり奴らを討たねばならん、 ならんのじゃ・・・!」

しばらくすると、ヘファイストスは戦車をごろごろと移動させ始めた・・・。
その厳しい視線はスサ達に向けられたまま。
いかついカラダのネストールは、再び坂道を降りてきて、残念そうに首を振る・・・。
 「ヘファイストス様は、あなた方がゼウス様に勝てるとは思っていません。
 故に、ここを通すことはやはりできない、との結論になりました。
 あなた方も覚悟を決めていただけないでしょうか?」
駄目か・・・。
タケルは仕方ないと思いつつ意を決した。
サルペドンの背中が震えてるように見えるのは気のせいか?
 「サルペドン?」
まだタケル達に悟られてはならない。
ゼウスとのケリが付くその時まで・・・。
すぐにサルペドンは己を律し、タケルに向かって励ましの言葉を送る・・・。
 「何でもない・・・。
 ここまできたら、最後まで気を抜かないことだ。
 頼むぞ、タケル・・・!」
 「お? お、おうよ!!」