Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

クラトスとビア 5

 
ミィナの調子のよさは見たまんまというか、
恐らく皆さんのイメージどおりだ。
まぁ、元々ここまで生き延びてきたスサの精鋭たちも、
女であるミィナを最前線に出そうなどとは考えちゃいない。
とはいえミィナも、ただの我が身かわいさで後ろに下がったわけでもない。
・・・本能的に理解しているのだ、
もう、自分のいる集団が、そんじょそこらの障害で、
危険に陥るようなヤワっちぃ集まりではないことに。
先頭をきるタケルの強さが、
もはや、どんな化け物が現れても、信頼してその身を任せれるレベルに達していることも。

もっとも、そのタケルの心の奥底で、
誰にも明かせないような恐怖と不安を抱えていることなど、
ミィナは知る由もない。
ただ、今現在、この時に於いては、
タケルだって、スイッチが入ればそんな弱気な心など、完全に忘れ去ることができる。
彼の鬼の化身のような戦闘力は、
そういった心の在り方を瞬時に変換できるところにあるのかもしれない。
才能や素質といってしまえば、本人はそんな解釈を拒絶するだろう。
・・・自分が生き残るため、
はらわたを捻じ切られるような苦悩や、無限に圧し掛かる責任の重さから逃れる為に、
いつの間にか身に付けてしまった習性なのだ。

さて、
目の前の真っ黒な猛獣に、普通の人間なら誰しも尻込みするか、
圧倒的恐怖で、その場にしゃがみ込んでしまうものだろう。
勿論、タケルだって想像を超える大きさに、最初の瞬間ビビッてしまった。
その前脚ではたかれたら、顔面の肉は頬骨ごと、ざっくりえぐられてしまうだろうし、
新鮮なエサに飢えた上下の顎は、いとも容易く人間の腕を噛み千切るだろう。
・・・それでも、
戦闘モードに切り替わったタケルには、もう恐怖の色など消え去ってしまっていた・・・。
 「こいつが相手か・・・!」