Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

クラトスとビア 7

 
タケルのレーザーのような視線は獣に向けられたままだ。
そして彼が一歩、また一歩、足を進ませる毎に、
可哀想過ぎるくらい、獣は慌てて後ずさる。
改めて思えば、タケルはある程度、こうなる根拠があった・・・。

あの時も・・・、
化け物でも犬でもないが、
東京西部で起きた秘密製薬工場での爆発の時、
騎士団露西亜支部支部長イヴァンとの戦いの時、
人間には決して懐かない筈のライオンが、自分タケルにかしずいてみせた・・・。
原因も理由も分からない。
もしかしたら・・・、
タケルが自分自身で怯えているそのものを、
彼ら動物は感じているのかもしれない。
知能の低い爬虫類程度では感知できない類のものかもしれないが、
少なくともタケルが「それ」を意識しだした時、
どんな獰猛な獣でさえも恐怖か恭順の意を示す!
こんな・・・未開の地の番犬でさえこの通りだ。

タケルが次に取った行動・・・、
それは空いている左の掌を背後の仲間たちに広げ、
獣を攻撃しないように指令する。
そしてその視線は、調教師の下へ・・・。
 「無駄だ、
 ・・・オレも犬、好きなんだよ・・・。
 オレにこいつを攻撃させるな?
 わかるだろ・・・!?」

タケルの言葉に呼応するかのごとく、獣は悲鳴をあげる。
獣を抑えていた兵士たちや調教師は、現実の光景が理解できないでいた。
いったい、目の前の侵入者は、どんなマジックを使ったのか!?
タケルの後ろのスサ兵士たちは、期待以上の戦況にときの声をあげる。
・・・もっとも、タケルには一瞬の不安が彼の心中をよぎった・・・。

(爬虫類程度なら? いや、そういや・・・あの秘密工場のとき、
 大量の蛇たちがオレを・・・。)