Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

クラトスとビア 8

 
そんな不安など、今はどうでもいい。
すぐに獣に意識を戻すと、やはり自分に対し怯えている様子だ。
後は調教師を何とかするか・・・。
どう見てもオリオン神群にも、冥界の王ハデスにも見えやしない。
 「おい!?
 オレの言葉は分かるだろう?
 別にお前から攻撃してやってもいいんだぞ・・・。」
そして改めて天叢雲剣の放電を強める。
・・・すでに彼らも、地上からやってきた侵入者が雷を使役する話は聞きつけている。
そいつによって、トモロス・シルヴァヌス・・・、
そして未確認だが死の神タナトスでさえも敗れ去っていることも・・・。
その噂話が現実に目の前に存在することを、改めて認識すると、
もはや調教師自体が恐怖に呑まれ始めた・・・。
 「や、やめろっ!
 わ、わかった、コイツを大人しくさせる・・・っ、
 し、しかしどうしてこんなに怯えて・・・?」
調教師は慌てふためきながら、真っ黒な獣の口輪を用意しようとする。
だが・・・そこに新たな変化が・・・。

バキィーンッ!!

その場にいる全員が、空気を破裂させるような金属音を耳にした。
タケルも・・・獣でさえも・・・。
ただし、タケルやスサの面々からは、音の源はわからない。
あの、不気味な門の向こうの坂道から、何かが降りてきたとしか・・・。
そして調教師たちが、その方向に視線を釘付けにしていることからも、
その方向から誰かがやってくることは確実なことのように思われた・・・。
 ジャラ ジャラ・・・。
また鎖か・・・。
だが、獣臭さもなければ・・異様な足音もない。
聞こえるのは、石段を踏みつけるブーツのような足音・・・それも二つ!
そして調教師は叫んだ・・・。
 「あ・・・! ク、クラトス様・・・ビア様!!」
 
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