Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死者を呼ぶ者 最終話

 
一方、
相変わらず、冷静な思考を保っているサルペドンは、
タケルの勝利への祝福などは他人に任せ、
自らにしかできない仕事に専念する。
このメタパの町の兵士たちに、
ハデスの救護と、ヘファイストス及びネレウスの解放を指示したのだ。
もちろん、ハデスもクラトスも敗れた今、
兵士たちに、かつての権力者ポセイドンの言葉に逆らえるはずもない。
ヘファイストスも「元気」とは決して言えないが、
多少なりとも環境のいい、ベッドのあるところに移されるようだ。

解放されたネレウスなどは、老人のクセして未だ活発だ。
今まで捉われていた自覚がないのだろうか?
サルペドンと再会するなり、何事もなかったかのように明るい挨拶を交わしている。
当然、呆れるサルペドン。
 「・・・その様子だと、こうなることもわかっていたのか?」
サルペドンの本気の問いに、ネレウスは笑いながら首を横に振る。
 「いえいえ、私は予言者ではないと申しましたでしょう、
 私は敬虔なるポセーダーオンの信奉者、
 私は信じていた・・・、
 ただそれだけでございます・・・。」

さて・・・、
このタケルの快挙を苦々しく思う者が、一人、ハデス神殿の崖の上から見下ろしていた。
読者の皆さんも忘れてはないだろうが、
少年神ヘルメスである。
いよいよ、最後の防波堤とも言うべき、ハデスが敗れたことをゼウスに伝えるため、
彼は舌を鳴らしながら、王都ピュロスへ向けて跳び立った・・・。
だが・・・
今までの戦いを見守るものが、
実はもう一人、タケルたちのすぐ傍に存在していた・・・。
プラチナ・ブロンドの髪を有する彼は、戦場を見下ろせる木立の中に一人潜み、
愉しげにタケルの一挙手一投足を観察していたのである。
そして、
その男も、ヘルメスに続き、
スサが次に向かう光の女神アグレイアの町に向けて、
誰にも悟られぬように消え去ったのだ・・・。