Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

死者を呼ぶ者 46

 
どの道、戦闘不能には違いない。
戦闘不能に陥った相手に対し、わざわざ止めを刺すつもりもない。
そのことを自分で認識すると、
タケルは振り返って、仲間たちに向けて腕をあげた・・・。
 勝どきだ!
何か・・・自分の中でまた何かが変わった・・・。
いや、変わったという表現は適当でないかもしれない。

帰ってきたのだ、
美香姉ぇが・・・。
子供のころから追いかけていたものが。
性別が違うとは言え、長い間、自分なりに追い求めていた理想の姿、
どんなに努力しても追いつける事などないと諦めていた目標・・・、
それが今、
自分の心の中のどこかで羽を休めている・・・。
心から安心して眠っている・・・。
そんな感覚がタケルの心の中で湧き上がっていたのだ・・・。

天叢雲剣の電撃能力?
ヘファイストス戦で手に入れた超常能力?
そんなものはどうでもいい。
この旅で取り戻したものの価値のほうが遥かに大きい・・・。

そしてタケルは駆けつけた仲間たちに揉みくちゃにされた。
みんな、今起きたことを明確に理解しているものなど誰もいないが、
スサの正統後継者たる資質の一端を垣間見て、
みんながみんな、タケルの本当の力を完全に認めたのだ。
もう、誰も、タケルを世間知らずのお坊ちゃんなどと言う者はいないだろう。

ただ・・・マリアは一人、そこを動けずにいた。
彼女も間違いなく感動している。
美香とタケルの間で起きた一つの奇跡・・・。
その「事実」と、これまで「スサ」や「タケル」に抱いていた微かな「怖れ」と「疑問」・・・。
それらが織り成す「連立方程式」の解が見出せないままでいる。
いや・・・、今は喜ぶべきなのだ・・・。
考える時間など、これからいくらでもある筈なのだから・・・。