妖しき歓待者 4
やがて、
モイラの予知能力のスキャンは終わったようだ・・・。
しかしやはり彼女は首を横に振り、
申し訳なさそうにゼウスに向かって頭を下げた。
「・・・何度予知してみても視える物は一緒でございます・・・。
ゼウス様も大怪我を負うことになります。
そしてそのしばらく後に、
怪我が完治された状態で、ゼウス様、ハデス様・・・その他大勢の軍勢で、
地上に降り立つ姿が私には見えるのです。
私めの予知が外れることは考えにくいのですが・・・。」
しばしゼウスは自らの顎に手を当て、考え込み始める。
目の見えないモイラには、そんなことは判らず彼の思考を一時、中断させた。
「あ、そ、そう言えば・・・!」
「・・・どうした?」
「地上に降り立つ軍勢の中に、一人、私めの知らない者がおりました。」
「ポセイドンか?」
「い、いえ・・・白い髭を垂らした老人です・・・。
気味の悪いことに、その真っ白の瞳を隠そうともせずに・・・」
そんな人物など一人しかいない。
すぐにゼウスはその老人が誰か思いついた。
「老神官ネレウスか・・・、何故、奴までもが我らと共に地上に行く必要がある?」
「も、申し訳ありません、理由までは・・・。」
埒が開かないせいか、ゼウスは再び無造作に腰を落とす。
いったい、どういうことなのか?
考えても考えても答えなど出ない。
そして彼は、モイラに語るつもりはなかったのだろう、
一人、つぶやくように口を開いた・・・。
「ネレウス・・・、
100年前、あのオリオン神群を二つに割った戦い・・・。
奴はポセイドンの神官でありながら、事もあろうに、ポセイドンの裏切りを私に密告してきた。
そしてその見返りとして、自らの信仰の存続を認めることだけを要求した・・・。
いったい、あの老人の本当の目的は何なのだ・・・?」