Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

妖しき歓待者 3

  
この期に及んでまだ言い張るか?
考えてみれば、スサが死の神タナトスとぶつかった時も、
「嘆きの荒野」で起きた、強力な思念波動をモイラ達は浴びせられてしまっている。
では、それ以来、彼女たちの感知精度に狂いが生じているとでもいうのだろうか?
その事をゼウスが指摘すると、
モイラは自らのプライドを賭けて、自分の能力の正確さを主張する。
 「おっ、恐れながらゼウス様、
 私は視た物をありのままに述べただけ・・・。
 冥界の王ハデス様にいたしましても、
 私めは『大怪我をなさる』と申しましたではないですか?
 勝負の勝ち負けは私の目では捉えていなかったのです。
 そして現に、ハデス様はご存命・・・」
そこでゼウスは語気を強める。
 「それだ!」
 「はっ!? ・・・ヒッ!?」
 「モイラよ、そなたは先の予言で勝ち負けは何も言わなかったな?
 互いの生死や負傷のことだけだ。
 何故だ?
 何か思うことがあって情報を私に伝えなかったのか!?」
 「そ、そそ、そんな! 滅相もございません・・・!
 ですが、わ、私めに視える部分は限定されたものなのですっ、
 知りたい部分全てが視える訳でも・・・。」
 「フン、ならば先のハデスの戦いで、奴が敗れるシーンは視えなかったと言うのだな?」
 「は、はい・・・その通りなのです。」
 「では・・・。」
ゼウスは立ち上がる。
業を煮やしたのかもしれない・・・。
 「私とポセイドンの勝負は・・・?」
モイラは即答できない。
別に隠し事をするまでもなく、本当にわからないのだ。
静かな時間が過ぎる・・・。
心に動揺を抱えたままでは予知はできない。
その辺はゼウスも理解しているので、彼もモイラの心が静まるのを待っていた・・・。