Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

妖しき歓待者 8

 
入り口を守る兵士たちの胸中などわかる筈もなく、
二十数名のタケルたち一団は、
案内されたとおりに、町の大通りを進む。
ここでも多くの住人たちが、彼らを静かな目で見つめている。
やはりデメテルヘファイストスのテメノスほど、友好的な視線ではない。
さすがに空気を読んだのか、ミィナですらいつもの大胆な振る舞いを抑えている。
せいぜい、あまり難しいことを考えなさそうな子供たちに向けて、
小刻みに手を振る程度だ。

 あ、子供たち、はにかみながら物陰に隠れちゃった・・・。

ま、それはともかく、町の中央に位置するアグレイア神殿は一目でわかった。
イメージ上にあるギリシア建築とはまた様相を異にする。
日干し煉瓦で積み上げられた塔状の建造物・・・。
メソポタミアジグラットを連想すれば良いだろうか?
神殿の入り口には簡素な堀が設けられて、
幅の広めな橋がしっかりと架けられている。
入り口は幾つかあるようだが、
石段を登った先の大きな正門の奥は、日の光が射さずに薄暗い・・・。
神殿の入り口を守るは・・・

ここでタケルたちは違和感を感じた・・・。
これだけ大きな神殿にあって、守備兵がいない。
いや、たった一人、猫背の男が入り口に控えていた。
「神の奴隷」とやらだろうか?
彼は遠目から見てもそわそわ、落ち着きない態度を見せながら、タケルたちを出迎えた・・・。
 「あ・・・ああっ、ち、地上の方々ですねっ、
 アグレイア神殿によ、ようこそっ・・・。」
やはり、外見同様、落ち着きのない喋り方をしている。
自分たちを恐れているのだろうか?
ここでタケルはサルペドンを頼らずに、自分から挨拶を切り出した。
・・・やはり、ハデスとの戦いの時に起きた不思議な体験が、
どちらかというと、これまで引っ込み思案だったタケルの精神や行動パターンに、
大きな変化を与えているようだ・・・。