Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー第二章 第八話

 
朝の教会は、寒さの分もあるせいか、余計、荘厳に感じられる。
今朝は雲も厚く、陽の光も十分には降り注がない。
決して大きな教会ではないが、古びた感じがなお、その荘厳さを高めていた。
私が白い息を吐きながら、スカーフをかぶった修道女に案内されると、
礼拝堂で昨日の神父が朝の礼拝を行っている。
 ここでは寒いからと、その場を過ぎ、石油ストーブの焚いてある小さな部屋へ。
しばらくそこで待っていると、祈りを終えた神父がやってきた。
 「おはようございます、今日はわざわざ、ありがとうございます。」
神父は私の挨拶には答えず、短く頭だけ下げると、いきなりこう切り出した。
 「あなたの・・・お子さん、娘さんでしたかな?
 普段、何か変わったことはございませんか?」
今度は私が面食らった。
まぁ昨日、話をふったのは私だからしょうがないんだが・・・。
 「え、ええ、普通の子供ですよ、特に・・・別段・・・何も・・・。」
 「では、お祖母さんというのは・・・?」
 「ああ、えーと、母親の方の祖母のことなんですけど、時々、
 娘が夢でお話するって言うんですよ、
 娘が生まれる前に亡くなっているんですけどね。」
神父にこんな話をすると、なんか重大な話に聞こえてくる。 
 「あの・・・ 娘は何か・・・?」 神父はしばらく考え込んだ後、私の顔を見据えた。
 「いえ、失礼しました、問題はないと思います・・・それで、ゴホンッ、
 昨晩の件ですが。」 
 「あ、ハイ。」 こっちも、背筋を伸ばして姿勢を正す。
 「まず、『メリー』という人形について・・・、
 これは我々の教会や宗派と何の関係もない事、
 また、まともなニュースには決して取り上げられる価値の無い、ただの噂話だということ・・・、
 これを覚えておいていただけますかな・・・?」
価値が無い・・・という割には、神父の語気には強い意志のようなものを感じられる。
 「は、はい・・・。」 ここではそう言うしかない。
だが、この時点で私の心中には、
未知のものに憧れる期待と、娘への関わりとの不安で想いを交錯させていた・・・。
後になって考えれば、聞かなかったほうが良かったのかもしれない。
 「・・・では 」
神父はため息をついて、呪われた「人形メリー」の話を私に語って聞かせた・・・。